交換


牧野と名前は辺りを探したが、名前の薔薇は見つからなかった。

「もうこの辺りの人形のどれかに拾われて…」

それだと痛みがいつ起こるかも分からない。名前は自分の身体を抱きしめた。

「そんなことないですよ…きっとどこかの隅に落ちてるんですよ…だから…! 」

牧野は彼女の肩に手を置いてなだめようとしていた。しかし、彼も最悪な予感が頭によぎってしまっていた。
そして、最悪な展開は訪れた。

「探し物はこれか?名前、牧野さん」

二人が一番聞きたくなかった声。二人をこの空間に落とした張本人である宮田が現れた。
宮田の手には赤い薔薇があった。名前の薔薇だ。二人に十分薔薇を見せつけた後、一枚一枚名前と牧野に見せつけるように花びらを千切り始めた。

「…っ」

千切られる度に名前の胸に鋭い痛みが走った。痛みに耐えきれず身体がふらつく。

「名前さん!」

ふらついた身体を牧野が支える。しっかりしてください。心配して必死に声をかける牧野。牧野を安心させたくて言葉を紡ぎたくても痛みのせいで叶わなかった。

―薔薇の花びらが無くなれば命も尽きる

薔薇を手に入れた時に現れた言葉が牧野の頭によぎる。

「止めてください宮田さん!このままだと名前さんが…!」

牧野の叫びが届いたのか宮田は千切るのを止めた。赤い薔薇の花びらはあと一枚。宮田がそれに手をかければ名前の命は薔薇と一緒に散ってしまう。

「止めてほしいですか?」

「…止めてくれるんですか?」

「条件があります。貴方がそれを飲んでくれたら名前の薔薇は返します」

「条件?」

歪んだ笑みを浮かべる宮田に牧野は嫌な予感がした。腕の中にいる名前も牧野と同じように感じたのか牧野さんと呟く。

「大丈夫ですから」

名前に牧野は微笑んで、宮田に向き合う。

「…条件は何ですか?」

「貴方の青い薔薇です。青い薔薇をくれたらこの赤い薔薇はお返しします」

薔薇を渡せば、名前の薔薇と同じようにいや全ての花びらを千切られてしまうだろう。牧野に命を差し出せと宮田は言外に言っている。牧野は理解した。
胸ポケットに入れている青い薔薇と名前を交互に見る。今、薔薇には何もされていないが、痛みは続いているらしく名前は小さく呻いている。これ以上名前に痛い思いを牧野はさせたくなかった。

「…分かりました」

青い薔薇を取り出して宮田に向ける。

「…あっさり飲みましたね。けどいいでしょう名前の薔薇はお返しします」

宮田は牧野に近づき青い薔薇を奪い取った。そして赤い薔薇をその場に落とす。牧野が慌てて赤い薔薇を受け止めた。

「…もう私たちに用はないですよね宮田さん?」

「ええ、消えてください」

出口はあちらですから。宮田はある方向を指さす。

「…信用してもいいんですか?」

「どちらでもお好きなように」

そう言うと宮田は指さした方向と反対方向に行ってしまった。








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