薔薇消失
全身の痛みで名前は目を覚ました。辺りを見渡すと天井も床も黒一色の空間だった。
落下しているときに別れてしまったのだろう牧野は近くにはいなかった。そして赤い薔薇が手元になかった。
(どうしよう薔薇がない…)
薔薇はこの世界に置いて命に等しいものだ。青い薔薇を絵画の女に引きちぎられていた牧野が苦しそうにしていたことを思い出す。名前の周りにはマネキンや怪しい人形がちらばっている。動いている物はいなさそうが、もし動く物に薔薇が渡っていたら…そう考えると名前は恐ろしくなった。
(牧野さんと薔薇を探さなきゃ…)
少し辺りを捜索すると薔薇は見つからなかったが、牧野は見つかった。うつぶせに倒れている姿は初めて会った時と同じだ。
「牧野さん…牧野さん…!」
彼の身体を揺すれば、牧野はすぐに目を覚ました。
「牧野さん大丈夫ですか?」
「はい、何とか…。名前さんこそ大丈夫ですか?顔色悪いですよ」
「実は…薔薇がないんです」
名前がそう言うと牧野は顔色を変えた。
「それは大変じゃないですか…!探しましょう…!」
辺りを探し出す牧野に名前は続いた。けど名前の胸には嫌な予感が広がっていた。