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 触れられたい



(そんなに恐々触らなくても大丈夫なのにな)

恐る恐る触れる牧野の手に名前は心の中で笑ってしまった。笑っているのをはっきりと態度に出せば、寝ていない事がバレてしまう。バレてしまえば普段殆ど自ら名前に触れない牧野はきっと触れていた手を止めてしまうだろう。それはすごく勿体無いと名前は思った。

牧野が寝ている自分に触れていることに気づいたのは、牧野との逢瀬で日頃の疲労が溜まったせいで寝てしまったのが始まりだ。それから時々狸寝入りして牧野から触れてもらうのが名前の密かな楽しみになっている。

「名前さん」

触れながら時々牧野は名前の名前を呟く。名前を起こすつもりを感じさせない小さい声。宝物のように大切に呟かれる自分の名前にくすぐったい気持ちに駆られる。

(牧野さん)

名前を呼ばれる度に名前も心の中で牧野の名前を呼ぶ。声には出せないけどそれで名前は十分だった。






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