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 未送信


未送信にずっと送信出来ずにいるメールがある。題名はつけずに本文に一文だけ書いたメールだ。その一文を書くのに何日も悩み考えてしまって、けど結局送らずに未送信にお蔵入りになってしまっている。宛先は沖田さん。彼とは宙ぶらりんな関係だ。付き合ってると言えば明確な言葉は私も彼も口には出していなくて、今更言葉を伝えるのには長い時間を彼と過ごしてしまっていて言い出しづらい。
せめてメールならと思ったけど結局出来ていない。時々戻ってきて未送信から引っ張り出しては悩んでまた戻してしまうの繰り返し。一歩勇気が出せない臆病な自分にため息が出る。



昨晩も悩んで寝てしまったらしい。目を開けたらケータイを握りしめいる自分の手。二つ折りのケータイを開いたままでよく折れないなと感心してしながらケータイを閉じる。
「…ん?」
ケータイを閉じると外側の液晶がぴかぴか光っていた。電話の着信が入ってるみたい。再びケータイを開いて確認すると、大量の着信と一件のメールの着信を知らせる表示。着信履歴を見てみる。一気に眠気が飛んでしまった。
「お…きたさん!?」
着信履歴全てが沖田さんの名前で埋め尽くされていた。彼に何かあったのだろうか。そう考えながら別の嫌な予感がした。履歴を閉じてメールボックスを開く。見るのは受信メールではなくて未送信メールの方だ。「うそ…ない」
あのメールが未送信の中から消えていた。送信メールを見ると、そこに存在していた。深夜2時くらいに送信したらしい。けど私は記憶がない。寝ぼけて送ってしまったらしい。あのメールが沖田さんの元に届いてしまった。そう思うと恥ずかしいより泣きたくなって怖くなる。
きっと一件だけのメールは沖田さんからのものだ。見たい。けど見たくない。怖い。相反する気持ちで揺れ動く。いつまでも見ないわけにはいかなくて恐る恐る受信メールを確認する。タイトルは無題。差出人は沖田さん。本文を呼び出す。

『今更過ぎるよ。馬鹿』

それだけ書いてあった。短い文章だけど今まで悩んでたことが馬鹿らしくなってきた。声が聞きたくなって電話したくなった。しかし今電話しても出ない方が高い。電話は諦めて、馬鹿だよねごめんなさいとメールをしてケータイを閉じた。


***
診断お題からでした



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