小説 | ナノ

 ある夏の日の前日


コンビニで買ったアイスを食べながら須田君と炎天下の道を歩く。暑いとか言い合っていると須田君が別の話題を出す。

「なあ昨日ネット見てたら面白い書き込み見つけてさ」

まただ。

須田くんの言葉を聞きながらアイスにかじりつく。どこかの村で起きた一人の村民による全住民の大虐殺だとか。軽く身振り手振りをつけて話す姿は楽しそうできらきらしている。

「へぇ」

いつもなら須田君の話に彼に感化されてわくわくしてくる私が、いろいろ質問したりする。けど今回は適当に相槌を打ってしまう。
同じ日、同じ話を何回も繰り返していたらちょっとくらい適当になってしまうのは仕方ない。ある一定期間を繰り返していることに気づいたのはいつだろう。明日には彼 は村に行ってしまう。そして私は見送った彼に再会することなく時間が巻き戻り、彼がネットの書き込みを話題に出すこの日がやってくる。

「名前ノリ悪いな」

私の態度がぞんざいなのに気付いた須田君が咎める。キラキラしてた表情は、拗ねた表情に変わりアイスをかじりついている。

「ごめん。アイスに集中してた」

炎天下の中で食べるアイスは時間との勝負だ。半分くらいは嘘ではない。私の言い訳に須田君はそれじゃ仕方ないよなと納得してくれた。
アイスにかじりつきながら考える。このループから乗り切るにはどうしたらいいのだろう。彼が村に行くことを止めさせる? どうやって?

行かないで。
引き止めるための台詞としては、ありきたりだけどそう言ったら須田君は行くのを止めてくれるのだろうか。

「気をつけてね」

ぐるぐる考えていたけど、きらきらしている彼の笑顔を曇らせるなんて私には出来ない。アイスと一緒に言葉を飲み込んで、代わりにいつもの言葉に吐き出す。

「ん?名前も一緒に行こうよ」

「私も?」

須田君の言葉にそのまま首を傾げる。須田君がこんなことを言うのは初めてのことで戸惑う。

「いいの?」

ここで彼の言葉に頷いたらどうなるんだろう。この状況が変わるのだろうか。

「一人で行くより二人で行った方が面白いだろ!」

なあ行こうぜ。もう一度言う。

「うん…!」

私が頷くと須田君は嬉しそうに笑った。








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