小説 | ナノ

 うたたね


目を開けて名前は初めて自分が寝てたことに気づいた。畳に放り出された自分の腕ともう一つ白衣に包まれた腕をぼんやり眺める。

「あれ…?」

「起きましたか?」

顔の向きを変えると牧野がいた。

「あれ牧野さん…」

「よく寝てましたね。眠れましたか?」

「はい…課題が犠牲になりましたけど」

話をしている内に名前の頭は段々覚醒してきた。長期休みの課題をしに牧野の家に来ていたが、睡魔に勝てず牧野に促されるまま寝てしまっていたのだ。
牧野の側の机の上には名前が放棄した課題が残っているだろう。このまま二度寝をしたくなったが、後々の自分の首を絞めることになるのは嫌だ。名前は起き上がろうとするが、牧野がやんわり止めた。

「もう暫くそのままでいてくれませんか?」

何でだろうと思ったが、背後を見ると理由が分かった。

「…宮田さんいつの間にいたんですか」

名前の背後で宮田がいた。しかも眠っている。名前の体の上に片腕をのせてもう片方は名前の頭の下に通してあった。腕枕状態だった。
名前にとって宮田は親しい近所のお兄さんであり、名前が小さい時は彼女が無理矢理押し掛けて一緒に寝たりしていたなんてことがあった。

「二時間くらい前でしょうか」

「気づかなかったです」

「ぐっすり眠っていましたからね」

宮田が起きないように二人の会話は小声になる。

「じゃあもうちょっとだけこのままでいいですか?」宮田を口実に勉強からまた少しだけ現実に目をそらせるなんて思ってしまう。

「起きるまでですよ」

その後はちゃんと勉強しないと痛い目見ますよ。そう付け加えて名前の頭を撫でる牧野に彼女は苦い顔をした。






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