小説 | ナノ

 ばれんたいん


『見ないふり』の夢主と同一設定



もうすぐバレンタインデー。クラスの女の子たちは誰にチョコを渡すかささやきあい男の子もそわそわしていました。
名前が渡したいと真っ先に思った相手は、お兄ちゃんと慕う牧野のことでした。クラスの子たちの影響でバレンタイン=好きな子に告白するという方式が彼女の中で成り立っていましたが、女の子は牧野に告白したいとは思っていません。牧野のことは大好きですけど恋ではなかったのです。長いお休みの間にしか会えない牧野にプレゼントを渡したいと思っただけでした。

(けどお兄ちゃんにどうやって渡そう)

名前は牧野の住んでいるところを知りませんでした。牧野と会うのは初めて出会った森の中だけでしたから住んでいる所が分かるはずもありません。唯一知っているのは牧野の家の電話番号でした。毎年数回しか会えないのが寂しいと言ったらくれた電話番号でした。

(お兄ちゃんの住んでるところ聞こう!)

すぐに聞こうと家の電話を占領して牧野に電話をしました。電話は何回もしたことがあるので緊張はしません。
数回のコールで牧野が電話に出ました。

「もしもし」

「けいお兄ちゃんこんにちは!」

牧野の声を聞くだけで名前は嬉しくなります。

「こんにちは名前ちゃん何か用かな?」

「あのね、けいお兄ちゃんに送りたいものがあるの。だから
住んでるところ知りたいの」

名前が用件を伝えると牧野は数秒黙りました。

「…いいよ。近くに書くものあるかな」

「あるよ!」

「じゃあ言うよ」

牧野はゆっくり住所を言いました。名前が書けなかった部分があれば、何回も教えました。書き終わった後、確認のために自分が書いた住所を読み上げました。

「…けいお兄ちゃんこれで合ってる?」

「うん、合ってるよ」

「よかった!ありがとうお兄ちゃん!」

「どういたしまして。ところで何を贈ってくれるのかな?」

「ひみつ!楽しみにしてて!」

黙っていた方が驚いてくれるそう思って名前は牧野に何を贈るか教えませんでした。
少し話をして電話を切った後、さっそくお母さんにバレンタインデー当日に牧野に荷物を届けてもらえるように頼みました。バレンタインのプレゼントに用意したのは、頑張って手作りしたクッキー。そして名前のお気に入りのうさぎのイラストが入った便箋に「けいお兄ちゃん大好き」と書いた手紙を一緒に送ってもらいました。

バレンタインデー当日の夕方、牧野からありがとうと電話があって名前がとても喜んだのは後日のお話です。











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