○つるぎ! | ナノ
「…だからってなんで俺に………」
「すみません!月満さんは怖いし、露木くんには面倒そうな顔をされたので!」
「消去法かよ…」

呆れたような車守先輩を前に、わたしはぺこりと頭を下げる。直接的に彼に接触をはかろうとすれば何度だって邪魔をされる。それならば、ワンクッション置いてみるのはどうかと考えたのだ。苦労人代表、車守盾一郎の提供で。

「…お前なにか失礼なこと考えてねえか?」
「……いえ!特には!」

わたしの表情から何かを読み取ったらしい彼がじとりとこちらを睨む。それにひらひらと手を振ってみせれば、彼の顔は次第に呆れ顔へと変わる。

「…塔間に目つけられるとか、お前もつくづく運が悪いよな。」

言いながら車守先輩がポケットから携帯を取り出すので、わたしの顔がわかりやすくパッと明るくなるのが自分でもわかった。「車守先輩……!」と彼へ向けて手を合わせてみれば、ぽんぽんとわたしの頭を叩きながら「あ?もしもし吊戯?」と彼が声をあげるのでわたしの心臓が本日最大の脈拍を刻む。

『盾ちゃん!!!?いいところに!!今どこ!!?』

電話口から聞こえてきた想い人の声にわたしは小さく小躍りする。そんなわたしの奇妙な動きを呆れ顔で眺める車守先輩の視線など歯牙にもかけない。

『ちょっとかくまって欲しいんだけど!!今弓ちゃんにおっかけられてて『吊戯ィィィィテメエ!この仕事終えるまでは帰さねえからな!!!『やばい!見つかった!!また後でね!!』

「………」
「………」

嵐のようにまくしたてた狼谷先輩の声を最後に電話が切れる。わたしは奇妙なポーズのまま思わず動きを止めてしまうし、車守先輩もかける言葉に困っているようだった。

「……まあ、あれだな、」
「?」
「お前もつくづく運が悪いよな…あとは頑張れ」
「………うす…」

目に見えて元気をなくしたわたしを車守先輩が困ったような顔で見つめているのがわかった。もう夕方だ。8/31が終わるまであと数時間。ケーキは渡せないにしても、せめて一言、おめでとうが言いたかった。

「……塔間がお前を吊戯から遠ざけたい理由、なんとなくわかる気がするよ。」
「…?」
「なんでもない。とりあえず吊戯に会ったら声かけとくから。あとは頑張れよ。」
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