○しきたん 2019 | ナノ
2


「……驚いた。」

待ち合わせ場所のバス停にわたしが欠伸を噛み殺しながら歩いていけば、ピンクのキャップを目深にかぶった志希がひらりと手を振っていた。

「……よく起きたね。正直今から志希を起こしに行かなきゃいけないと思ってたよ。」
「にゃはは、楽しみで眠れなかったんだよ〜〜……って言ったら信じる?」
「信じない。しょっちゅう色んな人との約束すっぽかしてトリップしちゃう癖に。」

ばさりとそう切り捨てれば、戯けてみせるかと思ったわたしの思惑とは外れ、志希は温度のある笑みでわたしに笑いかけてみせた。その瞳の深さにどきりとする。早朝の薄暗さがそうさせているのかもしれない、とわたしは必死に自分に言い聞かせる。

「……そう思ってるんだとしたらキミはあたしのこと、わかってないな。うん、全然わかってないよ。」
「………どういう意味?」
「ん〜〜そうだな〜〜気が向いたら教えてあげる!さ、早く行こ行こ!」

言いながら彼女はぴょん!と音を立ててバス停のベンチから立ち上がる。やけにはしゃいだ笑顔にわたしは思わず笑みを浮かべた。そうだ、まだ今日は始まったばかりだ。きっと今日1日を賭せば、この不思議な少女のことをほんの少し紐解けるかもしれない。

「………あ。どうせ志希は遅刻してくると思って早めに待ち合わせ時間設定したからまだまだバスなんてないんだった。」

思い出したかのようなわたしの言葉にぴくりと志希は肩を跳ねさせる。そうしてどしゃ〜〜!!!と口にしながら態とらしくわたしの膝の上にごろりと寝転がった。

「…もうキミは!!あたしのことなんだと思ってるの〜〜」

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