○ゆき | ナノ
「?幸、なんだその瓶、」

天馬のその言葉に幸はぎろりと鋭い目を向ける。普段は鈍感な癖に何故こうも、余計なことばかりに目敏いのか。

「………見ればわかるでしょ。香水。」

ぶっきらぼうにそう答えながら、机の上の棚に置いておいた瓶をそっとミシンの裏に隠す。「なんだよ、感じ悪いな…」とひとりごちた天馬は、それきり興味をなくしたらしい。手元の雑誌に再度目を落とした。その所作にほっとしたのも束の間、「あーっ!」と声をあげたのは一成だった。

「それ、名前ちゃんの使ってる香水じゃん?なになに、お揃いなの?」
「…は?何で一成があいつの香水把握してんの?」

弁解よりも先に、棘のある声が出た。その事実に思わずはっと口を噤めば、「……俺、香水詳しいんだよね〜。何もないから安心して大丈夫だよ。」と穏やかに微笑まれてしまう。余計にバツが悪くなった。

「なんだ、なら素直にそう言えばいいだろ。別に隠すことなんて「天馬は黙ってて。」なんでだよ!」

そう言いながらぷい、と横を向いた幸の視線の先で、今度は一成が訳知り顔でこちらを見つめている。その視線を意識して外そうとするも、「ははん?」と一成は意味深な声をあげる。

「…最近忙しくてなかなか会えてないもんね?」
「……もう、ほんと、うざい、一成…」
「どういうことだ?」
「天馬は黙ってて」
「だからお前なあ!」
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