○ゆき | ナノ
「やっぴ〜!名字名前ちゃんだよね?講義おつピコ〜〜!」

突如目の前に現れた見覚えのある男の顔、状況を掴み損ねた名前は彼の隣からこちらを見ている友人の顔を小さく睨んだ。

「あはは、なんか今日名前と遊ぶって言ったら三好くん、会ってみたいっていうからさ!」
「どうも、三好一成です!ゆっきーとは仲良くさせてもらってます!」

びし、とピースをする彼を見ながらそうだ、ミヨシカズナリだ、と名前は心の中で彼の顔と名前を一致させた。コミュ力高男……と名前は幸が彼につけたあだ名を思い出す。

「……はじめまして。名字名前です。」
「お!噂どおりクールビューティ!!ゆっきーも隅におけないなあ、こんな可愛い彼女がいるなんて!」

その反応に名前はほんの少しだけ面食らう。大抵の人間は、自分のこの温度の低さに少なからず驚くような素振りを見せる筈なのに。
幸にコミュ力高男と言わしめるだけあるな、と名前は彼への認識を改める。先日の皇天馬とはまったく違うタイプだ、と幸を含めた夏組のメンバーのキャラクターの濃さに思いを馳せた。


「…それでさ、どっちから告白したの?」

些か酒もまわりはじめ、ちょっとトイレ、と友人が席を外したのを見送っていれば、一成がそう問いかけてきた。言わんとしていたことを瞬時に理解した名前は、けれど一瞬逡巡した。

「……わたしからだけど。」
「あはは、そうだと思った!名前ちゃんって難攻不落っぽいからさ〜」

ほんの少し口ごもった名前に対し悪びれもなくそう言う一成にまた驚く。その動揺が伝わったのか、一成は「ごめんね〜、俺ぐいぐいくるからびっくりしたデショ〜」と笑ってみせる。

「…普通は言わないよ、そういうの。三好くんってへんなひと。」
「そう?あ、ちなみに俺すっごく褒めてるからね!?ゆっきーと名前ちゃん、たぶん良いコンビなんだろうな〜っていうのが、今日会ってみてわかったし!」
「…わかるよ。三好くんって人の悪口とか言わなさそうだもん。でもそうやって取ってつけると嘘くさい。」

そう切り捨ててみせれば、「そういうとこゆっきーと一緒!辛辣!!」と大袈裟に彼は机に突っ伏してみせた。その仕草にくすりと笑みを落としてみせれば、友人がテーブルに帰ってくるのが遠目に見えたので二人して口ごもった。

「…今度ゆっきーも呼んでごはんでも食べようね、」
「……そうだね。幸は嫌がりそうだけど。」

そうこっそり約束をして、小さく笑い合う。その晩、『なんか今日友達と待ち合わせしたらミヨシくん?って人も来て色々聞かれた…』と白状すれば、「は?????何それ聞いてないんだけど、」と声を低くした幸に、しばらくは約束果たせなさそうだな…と名前は内心で苦笑することとなるのだが。
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