○ゆき | ナノ
揺らめく、白い肢体が、艶めく。水中でぐるりと一回転したそれはざばりと飛沫をあげながらゆっくりと体を持ち上げる。伸びかけの髪からぽたりと雫が垂れた。彼女がゆっくりと視線をあげる。その姿はどことなく獣じみていた。
ぞくりとする。



「……なんでわざわざ彼氏とプールまで来てるのにガチなコースで泳いでるわけ?ほんっとあり得ないんだけど…」

その姿からふい、と目を逸らしながら幸がそう言えば、名前は途端に顔を綻ばせ「ごめんごめん、」と笑ってみせる。凛とした雰囲気が途端に崩れ、いつもの彼女に戻る。どことなく居心地の悪くなった幸は抱えていた膝を更にきゅっと寄せた。

「…こんな真夏日にこのレーンで泳ぐ馬鹿はアンタくらいだよ。」

そうだね、と言いながら彼女がゆっくりと幸の隣に腰掛ける。まだ息の整わない彼女の呼吸を隣に感じれば、さらに居心地が悪くなる。そんな幸に気がつかないらしい名前は「いやー懐かしくてついね、」と言いながらスポーツドリンクを煽った。

「……水泳部だったんだっけ?」
「そうそう。高校生の時だけどね。」

言いながら名前は眩しそうに目を細める。一瞬だけ想像した。今よりも少し幼い彼女が、飛び込み台の上から一心にプールを見つめる様を。「ふうん、悪くないかもね、」と思わず呟けば「何が?」と返されてしまい、慌てて「何でもない、」と言い繕う。

「…そいじゃ、そろそろ向こうでカップルらしくいちゃいちゃしますか、」

どうやら休憩の終わったらしい彼女が、手元の浮き輪を持って立ち上がる。紺のギンガムチェックの水着は幸が選びに選び抜いたこの夏のとっておきだった。こうして見ていれば、何の変哲もない女だ。先ほどまでの彼女が嘘のように。

「…もうちょっと、」
「?」
「…もうちょっと泳いでけば?見ててあげる、」

彼女が突然立ち上がるので、目前すぐの距離に真っ白な太腿が揺れる。それを意図して無視しながらそう言えば、きょとんとした様子の彼女が「え?あ、うん、」と自信なさげに呟く。かと思えば「ははん?」と言いながら次の瞬間には目を細めて笑ってみせる。

「…惚れ直したのかな?」
「うっさい、馬鹿なの?」
「あはは、楽しいね、」
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -