彼女はまず執拗に瞼へと唇を寄せ続けた。
「…ちょっと、志希、やめな、さい、」
「にゃはは、やめろと言われてやめるわけないよ〜」
こちらが抵抗すればするほど、彼女は楽しそうに啄むように口づけを繰り返すばかりだった。
「…なんで、そんな、とこに、」
「あは、もっとイイトコにしてほしいのかにゃ〜?」
戯けたような口調とは裏腹に、志希の目は危なげにゆらゆらと揺れていた。ああこれ、駄目なやつだ…と名前はぼんやりとした頭で考える。彼女はもう、どうしようもなく動物だった。
「…ちゃんと順番通りさわってあげるからさ、待っててよね、」
耳元でぼそりと呟かれたその言葉に、途端に体中の水分がなくなるような感覚がした。いつもそうだ。好きな相手とのセックスはこんな風に、すればするほど乾いて、渇いて、かわいて仕方がなくなる。
こんなにも人を欲しがることなどないと思っていた。細胞レベルで好き、だなんてフィクションの話だと思っていた。
「…わたし、志希に出会えてよかったなあ、」
脈絡のないその言葉に一瞬びくりと志希は動きを止める。そうしてばっちりと名前の目を見つめてからふ、と笑う。
「…あーあ。そんなに可愛いこというなら今夜は志希ちゃんの好きにさせてもらおっかな、」