「天馬くんの愛してるはとても実感がこもっていていいね。とても好きだ」 「は?」 唐突なその言葉に、彼は手元の雑誌から目をあげてしまう。長い睫毛が形作る影の美しさをぼうっと眺めていた名前は少しだけ残念になる。 「…俺、愛してるだなんて言ったか?ドラマの台詞か?」 そうして怯えた小動物のように、彼が首を竦めてみせるので途端に愛おしくなる。自覚のなかったらしいあの愛してるの響きを思い出しすこし、体が震える。 「言ってたよ。この間のセックスの「ああああああやめろ!そんなにストレートに言うな!」 慌てたように、全身を使って否定をするその姿に笑みがこぼれる。テレビの向こうとは違う、等身大とでもいうべき天馬の姿にほっとしてしまう。 「君がしっかりと愛されて、とても裕福に、贅沢に育ったことがよくわかる。育ちがいいね。」 そう零してみれば、それはどことなく拒絶を孕んだような響きをもって宙に留まるので、自分でもほんの少しだけ驚いた。ああそうか。わたしは羨んでいる、尊んでいる、憎んでいる、皇天馬の豊かさを。 「だからほんのすこし、さみしくなる。」 とってつけたように、表情を変えずにそう呟けば、彼の先ほどまでの慌てぶりが影を潜めてしまう。怒らせてしまっただろうか、と少しだけうかがうように天馬の方を覗き込めば、彼があまりにも悲痛な顔をしているのでひるんでしまう。どうしてこう、なのだろう。どうして自分はこんな生き方しか、できないのだろう。 「…俺は死ぬまでにあんたのその、さみしさを埋めることができると思うか?」 「……皇天馬らしくないね。どうしちゃったの、」 名前の髪を掬い上げながらそう告げる天馬にほんの少しだけ面食らう。そのすぐあとに零された「…いや、なんでもねえ、」という言葉に心臓が痛むような感覚に陥る。 …そうだね、少なくとも君にそんな顔をさせてしまうくらいだから。きっといつか、わたしたちは、わたしたちはさ、 『いつか君とは道を違えてしまいそうで』 |