短編2 | ナノ




これの続き



くしゅん、

間抜けなくしゃみの音が響き、思わず足を止めてしまった。日の暮れかけたショウウィンドウにうつるわたしは、ざっくりと編まれただけのサマーニットとタンクトップという出で立ちで、なんというか大層心許なかった。
天気予報を見る習慣のないわたしは基本的にいつもこうだ。夏になったのだから毎日暑いのだと思っているし、冬になったのだから毎日寒いのだと思っている。

こんな風で生きて行けるのか、とほんの一瞬情けなくなる。そうしてすぐに自嘲的に笑った。あの頃は、寒い夏日には口煩くわたしにカーディガンを羽織らせる男がいた。そんな、遠い日を、思い出す。

『おい名前!これ着てけって言ったろ!!なんで玄関に置いてあるんだよ!!!』
『ええ〜だってこんなに晴れてるんだよ?暑いってば、』
『…夜になると寒くなんだよ、黙って着てけ、』

無理矢理にカーディガンを羽織らされ、不服そうな顔をしながらもえへへと笑うわたしは幸せだった。よく覚えている。だってほら、今のわたしはこの世界の暑さも寒さもよくわからない。わたしひとりでは、到底、




もう一度、大層寒そうな自分の姿をウィンドウで確認したわたしはほんの少しだけその姿に微笑みかけた。そうして歩き出す。大丈夫だ、生きてゆける。まだ、呪いは解けないけれど。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -