短編2 | ナノ




テレビのライトが華々しく彼女を彩っていた。

当然のように澄ました顔をして彼女は大歓声を受け止めている。そう、そこはあなたがいるべき場所。そうしてわたしはひとり、テレビの前で無意味に爪を噛んでしまう。

そんな、彼女の晴れ舞台を純粋に喜べる立場だったなら、若しくは全くの無関係だったなら、若しくは彼女を育てたプロデューサーにでもなってみせられたなら。それならばわたしは満足できたのだろうか。
手元の携帯では、タイムラインを彼女の写真、絵、絵、写真が目まぐるしく流れてゆく。わたしもそんな風に、後ろ暗くない場所から彼女を祝えたら良かったのに。


そうではない。わたしはもっと獣じみた感情で、喉が乾くように一ノ瀬志希が欲しい。欲しくて欲しくて堪らない。
偶像崇拝では飽き足らない。わたしだけのものにしてしまいたい。

どうしてこうなのだろう、と思う。どうしてみんなのようにできないのだろう、と思う。どうしてわたしはこんなにも汚れた思いを、こんなにも薄汚い場所で燻らせるばかりなのだろう。

それならいっそ、出会わなければよかった?とさえ思う。けれど彼女と出会わなければ、わたしはこんなにも焼けつくような気持ちを知らなかった。自分が生きていることすら、実感出来なかった。

今感じるこの苦しみよりも、あなたを知らないまま死んでゆくほうがずっと辛い。それならばわたしは、この苦しみすらも愛していたい。





一ノ瀬志希、総選挙第6位おめでとうございます。


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