「結局のところ、つるぎなの?つるぎなの?」 ずい、と迫ってみれば、吊戯は面食らったように目をぱちくりとさせる。 「…名前ちゃん、それ、字面だけじゃ何を言いたいか伝わらないよ、」 そうして、その言葉の意味を理解したらしい彼は力なく笑った。彼自身はあまり気にしていないが、こちらとしてみれば重要な問題だった。 「周りのみんなはつるぎ、って言うけど、わたしはずっとつるぎ、だと思ってたの、」 そう、イントネーションの話だ。つるぎ、という儚くも美しい名前を、どういう風に呼ぶべきか迷っているのである。 「…別にいいじゃないどっちだって、」 「よくないよ、わたしは正式な方が知りたいの、」 ずい、と更に歩み寄れば、吊戯は困ったように眉を下げる。うーん、といいながら頭を掻き、ちらりとこちらを見据えた吊戯は、そのままの表情でどさりとこちらへ体重をかけてきた。とつぜんのできごとに、今度はこちらが面食らう。 「んー、ほんとにどっちでもいいんだよなあ、」 「…ちょっと、吊戯、」 淡々とした表情で、とんでもないことをやってのけている彼をけとばそうとすれば、その脚は簡単におさえつけられてしまった。その様がおかしかったのか、吊戯は小さく笑いながら唇を耳元へ寄せてくる。 だって名前ちゃん、喘ぎながらオレの名前呼んでる時、うわごとみたいでどっちなんだかわかんないもん、 そう言われ、唇を奪い取られた途端に、たしかにどうでもよくなったわたしは、なんてゲンキンな女なのだろう。つるぎ、と、小さく唇の中でうわごとのように転がした。 |