雨のち晴れ


くるくる
傘を回しながら少女は歩く。
くるくる
頭の中はある人のことが巡る。

今日の夕飯は何にしようかと八百屋によって野菜を品定めするけれど、くるくる。
鈴子のことが気になる。

だって、雨の日の鈴子は自分の知っている鈴子じゃないような気がするから。

「アンジュちゃん!こっちの方がお買い得だよ!」
「あ、ホントだーアンジュったらウッカリさーん」
「アンジュちゃんがお買い得商品を見逃すなんて道理で今日は雨が降る訳だ!!」

八百屋のおじさんは豪快に笑った。


くるくる
傘を回しながら。
くるくる
貴女のことを考える。


家に帰ると鈴子の姿が見えない。
サァーっと血の気が引く。
もしかして、私を置いて何処かへ行ってしまったの?!

慌てて家中を探す。
見つからない。
くるくる
最悪のことが頭の中を駆け巡る。

ふと、庭に目をやると天を仰ぎ微動だにしない雨に濡れた鈴子。

「鈴子!!何やってるの?!」

その顔は青白い。

アンジュは裸足のまま庭にかけ降りて鈴子を抱きしめる。

「嫌よ。私を置いていかないで……」
ゆっくりと視線をアンジュに向けるとうっすらと笑う。
「馬鹿ね。何を大袈裟な」


雨が降ると鈴子は時々、おかしくなる。
その理由が知りたい。
でも、聞けない。
聞いたところではぐらかされてしまうだけ。

ねぇ、鈴子。
貴女はひとりじゃないのよ?
あたしじゃ役に立たないかな?

くるくる
窓辺に下げているサンキャッチャーが回る。
太陽の光を浴びたらまたあのキラキラした輝きを放つの。
だから、それまで少しだけ待ってるわ。




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