鈴子とアンジュ


「鈴子ー鈴子ぉー」
屋敷の中を駆け回る一人の少女。
金髪碧眼で身にまとっている所謂ロリータ服がこれまた似合っている。

彼女の名はアンジュ。
探しているのはこの屋敷の主。

「んーもう!いっつも仕事をほったらかして逃げるんだからぁ」

鈴子の仕事は探偵。と言えば聞こえは良いが、実際のところはなんでも屋だ。
迷い猫の捜索や浮気調査なんかも依頼されるが気がのらないと軽く依頼主をあしらう。
これでよく生活が出来るものだとアンジュは不思議でならない。

「鈴子おぉーー!!」

一向に見つからない主に鳴り止まない電話のベル。
苛立ちは最高潮。

「煩いわねぇ……」
振り返るといくら探しても見つからなかった人物が突如現れた。
黒髪に黒い瞳アンジュとは対照的である。
眠たそうに眼をこする。
「まぁーた昼寝?」
「何のことかしら?」
アンジュは、はぁ、とため息ひとつ。
「さっきから電話が鳴り止まないんだけど」
「あら。それは大変。すぐに電話線引っこ抜きましょう」
そう言うと鈴子はノロノロと歩き、電話線を抜いた。
すると、当たり前だがピタリと止むベル。

この主は何を考えているのだろうと。呆気にとられるアンジュを横目にさぁ、ブランチにでもしましょう。と鈴子。

「ねぇ、もうすぐお米無くなるわよ」
「米が無ければパンを食べればいいのよ」
「なんか、どっかで聞いたようなフレーズね。残念ながらパンもお菓子もありません!働かざるもの食うべからず!!アンジュちゃんはおこですよ!!プンプン!!」
腕組みをし、天井を見上げる鈴子。
「仕方ないわねぇ。あのハゲ親父から金巻き上げるか……」
ジーパンのポケットから1枚のクシャっとした名刺を取り出した。

そんなこんなで、餓死は免れそうだ。

「もっと真面目に働いてよ」
「ん?なんか言った?」
「なーんにも言ってないよーだ」




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