花と毒


嗚呼、憎たらしい。
百合子さんは大した学力も無いのに、何故かクラスの中でちやほやされていらっしゃいます。
わたくしはそれが疎ましく必死になって勉学に励み学年上位の成績をおさめています。
けれども、先生方やクラスメイト、はたまた先輩、後輩にも慕われるのは百合子さんなのです。
わたくしはいつも教室の端で読書をして、百合子さんは教室の真ん中でクラスメイトに囲まれちやほやされているのです。

わたくしだって皆さんと仲良くなりたい。
そう思って、努力しました。
けれど、当り障りのないお話しかできません。

百合子さんのどこがそんなに人を惹き付けるのでしょうか?


でも、わたくしは知っています。
きっと、わたくししか知らない事実を……

それは、体育の授業の時。
体調が悪いと教室に残った百合子さん。
わたくしは、足をくじいてしまい一旦教室に戻ろうとしたのです。
その時。
わたくしの水筒に小さな茶色い小瓶から何かを入れる百合子さんの姿が窓越しに見えました。
その時は何を入れているのか分かりませんでした。
いい気分ではありません。
わたしくはお弁当の時間。水筒には口を付けませんでした。
すると、「あら?智子さんはお茶をお飲みにならないの?喉が詰まってしまいましてよ?」
普段はわたくしなど相手にもしない百合子さんが声をかけます。
周りの取り巻きたちも「まぁ、百合子さんはお優しいのね」「気がきくわ」などと言っています。
しかし、先ほどの光景をみた後では水筒に口をつけるなんてでませんでした。
すると、どうでしょう?
クラスメイトたちはわたくしを責め始めました。せっかく百合子さんが好意で言っているのに無視をして無礼だと。
とても辛く、惨めでした。
百合子さんが水筒に何か混入させたことを言ったところで信じてもらえることなんて到底無理でした。

後日、先生からも皆さんと仲良くしなさいとお叱りを受けました。
これほど惨めなことはありません。

そして、まもなくして理科室からヒ素がなくなったと言うお話がありました。
ヒ素が入った瓶は茶色い小瓶。
わたくしは確信しました。
あれはヒ素だったのだと。
それからわたくしは水筒を持って行くことを辞めました。

そうすれば百合子さんにヒ素を入れられないと。
怖くなってお弁当も持っていくことが出来なくなりました。

そんな日が続いたある日。
百合子さんがお弁当と水筒をわたくしに差し出してきました。
「智子さん食べないと体に毒よ」
悪寒。鳥肌がたちました。
周りにはクラスメイトと先生の視線。
百合子さんを賛辞する声。
受け取るしかありません。
「お家に帰ってからお食べになって、もう、お昼の時間はおわってしまったから。うっかりしていてごめんなさいね」

わたくしは形だけの礼をいって受け取りました。

帰り道。
野良猫がおりました。
そっと、百合子さんからのお弁当と水筒の中身をだし、食べさせて見ました。


なんてことでしょう!
猫は苦しみ痙攣を起こし泡を吹いて動かなくなりました。

嗚呼、神様!!

どうしてあの悪魔のような百合子さんが祭り上げられわたくしは虐げられるのでしょうか?

ほくそ笑む百合子さんの歪んだ顔が目に浮かびました。

わたくしは絶対に屈しません。
孤独でもわたくしは神様さえわかっていてくれればいいと嗚咽を漏らしその場にうずくまりました。




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