「アンタのことが好きだ。……って言ったら、アンタはどうする?」
 スコールは咄嗟に今日の日付を確認した。四月か?と思ったが、エイプリルフールには早すぎる日付。エイプリルフールは午前中ならば嘘をついてもいいという行事であるが、彼がそれに悪乗りしているわけではないということに気付いたのは、カレンダーを凝視してからだ。
 この場合、嘘というよりは逆さまの意味を取るか。とは思いつつ、それにしても笑えない冗談を持ってきたクラウドに、スコールは答えに窮した。何と答えれば相手の望む答えになるだろうか。否、相手の望む望まないで答えるものではないのだろうが、いずれにせよ困ることに変わりはない。
 何も言えずにいると、クラウドは少しの苦笑を零して踵を返そうとした。
「アンタにはちょっと難しい質問だったか。忘れてくれ」
 背を見せたクラウドに、スコールははっとして手が動いた。考えるよりも先に体が動いて、はっしと相手の手を掴む。クラウドが目を丸くして振り向いた。
「アンタが俺を好きなら、俺はアンタを放さない。絶対にだ」
 やや顔を上げてこちらを見るクラウドに、スコールは迫り気味に告げた。意図せず零れた言葉は、まるで独占欲を露わにしているよう。意識していないからこそ、それは潜在的にある欲求ということで、思わぬところで露顕した願望に頭を抱えたくなった。
 しかしここで頭を抱えるわけにも行かず、黙ってクラウドの動向を見つめる。彼はきょとんとしていたが、やがて柔らかな苦笑を見せて口を開いた。
「随分と熱烈だな」
 クラウドの掴んでいないほうの手が頬に伸びて、そっと添えられる。その手の優しさに動揺する間もなく、顔が近づいてきて唇が触れ合った。一瞬の接触だったが、その柔らかさは十分に分かった。
「ちょっとした戯言のつもりだったんだが、期待以上だ」
 青い目を細めて笑むクラウドの、白い頬が仄赤く染まるのを、どうしようもない思いで見つめる。溢れんばかりに湧いてくる想いに翻弄されて、言葉が出てこない。こういう時はどんな言葉をどんな風に言えばいいのだろうか。
 だが言葉を探す時間も惜しくて、スコールは考えることを一旦放棄した。間近にある体躯を腕の中に収め、顔を寄せる。閉じられたクラウドの瞳の青さを、脳裏に浮かべながら。






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