「クラーウド!」
 こちらに背を向けて座るクラウドに、ティーダは透かさず声をかけた。あの特徴的な髪型、見紛うはずもない。駆け寄って背に抱きつくと、光るような青い目がティーダを捉えた。
「ティーダか」
「武器の手入れっスか?」
「あぁ」
 胡坐をかいている彼の膝の上には、バスターソードが横たえられている。彼の身の丈にはやや似つかわしくない武器だが、彼にしか扱えない雰囲気もあった。
 多数の細かな傷が見受けられるそれを、クラウドは念入りに手入れをする。以前に、この武器は大切なものなのだと聞いた。その思いが伺い知れる手の入れように、ティーダはじっと見入った。
「―――ティーダ」
「ッ、え?」
「いい加減、重い」
 言われて、ずっと彼の背に乗りっぱなしだったのを思い出した。
「あ、わり」
 慌てて退くと、クラウドが凝った肩を解すように回す。そんなに重たかっただろうか。
「隣で見てていいっスか?」
「別にいいが、面白くないぞ」
「そんなことないっスよ!俺、クラウドのこと見てるの好きだし」
 手を止めてこちらを向いたクラウドが、やや怪訝な顔をした。何か変なことを言っただろうか。首を傾げてみたティーダに、今度は困惑気味の表情。
「誤解を生みそうな言い方をするな」
 溜め息交じりに注意され、そんなこと言っただろうかと思案する。前言を振り返ってみても、“誤解”生みそうな言い方など見当たらない。
「オレ、嘘は言ってないっスよ」
「そうだろうがな」
「ホントにクラウドのこと見てるの好きっス。誤解でもなんでもなく、本気で」
 身を乗り出して捲し立てると、面食らった顔と顔がぶつかった。丸く見開かれた目に、自分の顔が映る。
 しばらく睨めっこするように見つめ合っていると、やがてクラウドが苦笑を零した。細められた目が、微笑に煌めく。綺麗だと、心底思った。
「解ったよ」
 伸びてきた手が、頭をくしゃりと撫でる。不器用ながらも優しい手つきだ。くすぐったさに思わず笑みが零れた。
「解ってくれればいいっス!」
 調子に乗って再度抱きつくと、「こら、危ないぞ」と注意しつつも引き剥がそうとはしない。ティーダは許されているのをいいことに、そのまま胸元に頬を押し付けた。
(クラウドが好きってことも、解ってくれるといいんだけど)
 そんな本音を口にすることはできないまま、今はまだそれでもいいかと、笑い声をあげた。






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