その身体を壁と自分とで挟み込む。マドルに囲い込まれたバルドルは、灰緑色の瞳に戸惑いの色を乗せた。
「マドル……?」
「バルドルは無防備過ぎるよ」
 マドルの唐突な言葉に、バルドルは理解できないといった風に怪訝な顔をする。分かっている。バルドルには知る由もないことだ。だが。
「俺がどれだけ我慢してるか、お前はわかってない」
「我慢? 一体何を……」
「……知りたい?」
 金の髪を掻き上げ、そこから輪郭を確かめるように頬を撫でる。緩やかな曲線の甘やかな感触。未だ知らぬ唇の柔らかさは如何程か。
 抵抗など知らないと言わんばかりにそこから微動しないバルドルの顔に近付く。吐息に吐息を重ねて、視線を絡み付かせて、彼の知らない己の執着を見せたらなら。
「教えてあげるよ、俺が何を考えてお前に触ってるか」







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