「神と人が交わることは間々ありますが、神と妖が交わるとは、ね」
 褥に寝転びながら、神が言う。さんざん鳴かされた声は多少掠れてしまっているが、聞き心地の良さは変わらない。不思議とすっと耳から胸へと落ちていく声に、妖は耳を傾けた。
「神と妖、同一視されることはありますが、あくまで同じものに視えるというだけの話ですし」
「今までになかったのかよ」
「さて、どうでしょう。あったと思いますか? それともなかったと?」
 小さく笑いながら、意地悪く答えをはぐらかす。金緑の瞳は悪戯を思いついた子供のように光り、だが甘さも帯びて艶やか。妖は誘われるように、覗き込むように、顔を近づけた。
「まァ、あるだろうな。ここに、よ」
 吐息ほどの笑い声を奪って飲んでやる。数度、唇を吸ってやれば、吐息は甘いものに様変わりした。
「突然しゃべりだして、何だ? まだ鳴き足りねェか?」
「まさか。もうお腹いっぱいですよ。これ以上は溢れてしまいます」
 そう答えながら、腹をさすって見せてくる。膨れた様子もない平らなその腹に、あるとすればそれは数刻前に存分に注いだ己の精。
「いいンじゃねェか。溢れたら溢れた分だけ、また入れてやるよ」
 覆い被さるようにして、見下ろす。神は美貌だ。その金糸を掻き上げるように梳けば、目元に淡い朱を引いた。眼は蕩け、指が甘えるように手の甲をなぞってくる。期待に満ち満ちた相貌。
「孕むまで抱いてやるから、神と妖の子、産めや」






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