『オノゴロ島周辺の天気をお伝えいたします』
 眠気で働かない頭でテレビを見る。最近、観るようになった天気予報。雨が降ろうが風が吹こうがヤマトタケルとしてはどうでもいいのだが、観ずにはいられない。何せ一目惚れなのだから。
 ちょっと夜更かしのつもりでオールしてしまった明け方。もう寝ようかと思いながら点けたテレビに映し出された姿に、目が釘付けになった。ろくに回らない頭でも、しっかり焼き付いた顔。世の中には本当にこんなことがあるのかと。
 果たして天気予報士オモイカネは、ヤマトタケルの午前五時の顔になった。的中率に定評のある彼は、わずか数分という予報の間に高視聴率を叩き出すらしい。甘いルックスも相まって人気もあるらしく、ヤマトタケルに限らず全国的な午前五時の顔と言ってもいい。
『張り出した高気圧の影響により、好天が続く見込です』
 柔らかで穏やかな声色、抑揚の抑えられた口調は、眠気を誘発される。これは学校の授業に似ている。授業ならば遠慮なく寝ていたものだが、これは寝るわけにはいかない。平日の間は毎日のように観られるからと言っても、それは数分しかないのだ。
『天気予報をお伝えいたしました。それでは皆様、お気を付けていってらっしゃいませ』
 やがて画面が切り替わり、花のような笑顔が消される。途端に面白みのなくなったテレビを消し、ごろりとその場に横になった。静けさに返って眠りが阻害されるようだ。けれど、起きる気にはならない。
 真っ黒になった液晶画面を見つめながら、今し方見ていた顔を思い出す。アイドルにガチ恋するドルオタのような女々しさに溜め息しか出ない。しかし、好きになってしまった。夢見るほどの恋情を覚えてしまったのだ。
 寝返りを打つ。ガシャ、とぶつかるのは大量のメイク道具。これらを駆使して美女に化けたとしても、彼とは付き合えない。ましてやTakerun.の親鳥だったりしないだろうかなどとは、望みの薄すぎる奇跡だろう。






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