恋仲になったわけではない。永久に兄弟である。だがニンアズは不意に覚えたシンとの口付けを止められないでいた。
 薄い唇を吸うと、応じるように吸い返される。柔らかな肉を吸い合う行為はひどく心地が良く、夢中になって貪った。時折、兄から零される色付いた吐息に堪らなく興奮する。涼やかな言葉を吐く口から、そんな熱い息も出るのかと思うと、逆にこの身の芯に熱がこもる気持ちがした。
 差し出した舌を、慣れたように迎え入れるシン。熱いほどの咥内の熱に、彼も興奮していることを知る。ニンアズは淫靡な歓喜を覚えて、事を急くように彼の上顎を舌先で愛撫した。それにシンが嬌声になりきらない声を喉から漏らす。僅かに逃げようとする身体。ニンアズは頬に手を添えて、それを緩やかに阻止した。
 じっくりたっぷり咥内を堪能して、ようやく口を解放する。上がる息に閉ざせない口から、注ぎに注いだ唾液が飲み下しきれずに零れていた。普段は透き通るほどに白い頬が、今は上気して赤い。そんな熟れた頬の上で、冷ややかな色をした瞳が熱に浮かされたように蕩けていた。
 ぞくぞくと背筋を這い上がる欲情。身体を重ねるように抱き寄せると、シンが吐息を乱して返事の代わりとした。ゆったりとした服に隠した痩躯をまさぐる。背に縋る手に、耳元の不規則に震える吐息に、欲求不満が募って仕方がなかった。
 今にも喘ぎそうな口を塞いで、唇を長めに吸う。すると、そこで初めてシンが小さくニンアズの名を呼んだ。下肢に響く声だった。返事として名を呼び返すことしか出来ず、浅ましく腰を押し付けた。
 決して恋仲ではない。兄弟以外にはなれない。だが言葉を交わし合うよりも先に口を重ね合わせている。兄は何を思って弟からのそれを享受し、応えるのだろうか。言葉で語り合うことを忘れた身体では、知る由もない。ただ単純に、肉体の昂揚を以てして悦楽を探り当てるばかりだ。
 まだ触れたことのない肌。近いうちに、我慢できずに暴いてしまうだろう。それをもこの兄は受け入れるのだろうか。薄汚れた欲望を、その身の内に注がせてくれるのだろうか。






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