貴方は暇だったら『相手の肩にもたれかかって寝てしまっているタケミカオモ』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。 https://shindanmaker.com/524738 社を訪れていたヒカルゲンジを、タケミカヅチとともに屋敷まで送り届けた帰り。都そばの街道で悪霊の襲われていた商人を助けたところ、礼に島付近まで荷馬車に乗せてくれるということで、言葉に甘えた。都から島付近までの道のりはそこそこある。何よりタケミカヅチが疲れているようだったので、有難い申し出だった。 そうして、荷台に揺られている。馬の蹄の音と、荷車の程好い揺れが心地よい。これは眠気を誘発されてしまいそうだと、オモイカネは思った。天気もいいし、加えて一仕事終えた後だ。弛んだ緊張の隙間に、きっと睡魔が忍び込んでくる。 隣に座るタケミカヅチを見ると、案の定、彼はひどく眠そうにしていた。目をぎゅっと瞑り、しかめ面などして誤魔化そうとしているが、振り払えないでいる。 遠征帰りでさらに護衛もこなした後とあっては、当然のことであろう。例え本人に自覚がないとしても、体は確実に疲弊している。休息を欲しているはずだ。 「眠ってもいいんですよ」 声をかけると、タケミカヅチははっとしたようにこちらを見た。 「ああ、いや、大丈夫だ」 彼はそう言って、再び前を見据える。だが一時はしゃんとした眼差しも、すぐにぼやけだした。そして軽く船を漕ぎだす。オモイカネは零れそうになる苦笑を押し止めた。 「休めるときに休んでおくことも、大事なことだと思いますよ。心配しないでください。悪霊が出たら、遠慮なく起こしますから」 「……はは、そうだな。……うん、そうしてくれ」 タケミカヅチは言い淀みながらも、苦笑して頷いた。その胸には己の不甲斐なさが去来していたことだろう。真面目一辺倒な彼のことだ、帰るまでは気を緩めまいとしていたに違いない。互いに休める時間を作る意味でも仲間がいることを、知らないわけではないのに。 タケミカヅチはようやく甘えて、荷に背をもたれて目を閉じた。悪霊が出たら起こすとは言ったが、何かあればわざわざ起こすまでもなく飛び起きるだろう。彼のひと時の安らぎのためにも、何事も起きないことを祈るばかりだ。 ――そうして幾許もしないうちに、肩に重みがかかった。確認するまでもなくタケミカヅチだ。視界の端に艶やかな黒髪が映り、徐々に体温が移ってくる。彼は体勢が崩れたことにも気付かないほど寝入ってしまっているようだ。 オモイカネは声に出さずに苦笑した。これほどまでに疲れているのに、彼は決してその献身を忘れない。分別のある誰かが傍にいなければ、限界を超えても戦い続けてしまうだろう。そしてその誰かは、かつてフツヌシが担っていたに違いない。 彼とともに歩むようになった今、それを担うのは自分なのだろうか。時には彼を制し、時には彼を支える。軍師的役割を得意とする自分にはおよそ適役のようにも思えるが、果たして自分は彼にとってそのような存在になれるのだろうか。 思案してしまったが、いずれにしろ今は彼の安眠を守ることが役目だろう。眠りに就いてその身を預けられるまでの信頼を寄せてくれる彼のためにも、静かに見守ろう。 ふと彼が身動いだ。よく寝ている。オモイカネは思わず笑ってしまい、タケミカヅチの髪を微かに揺らしてしまった。 |