今日のオモイカネとヤマトタケル:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
#同棲してる2人の日常
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 そろそろ来る頃だろうか。時計を見上げて、オモイカネは居住まいを正した。会いたいという気持ちが、オモイカネの体を無意味に動かす。いまだに心が逸ってしまう。
 ヤマトタケルと恋仲になり、互いの部屋を行き来するようになって数か月が過ぎた。何度も逢瀬を繰り返し、幾度となく体も重ねてきた。だが、それでもなお自室に彼を招き入れるのには僅かな緊張が伴っている。外で待ち合わせるのとはまた違った感覚が、ここにはあるのだ。
 やがて鳴るインターホンに、思わず背筋を伸ばす。落ち着いて立ち上がって、慌てず騒がず玄関へ向かい、戸を開ける。
「おかえりなさい。――あっ」
「――……ただいま」
 咄嗟に出てきた言葉に、オモイカネは徐に口に手をやった。言われたヤマトタケルが呆然気味に返事をする。しばし流れる静寂。そして二人して羞恥に顔を赤くした。
 ここはオモイカネの部屋であって、ヤマトタケルの部屋ではない。同居しているわけでもなく、ただ互いの部屋で交互に寝泊まりをしているに過ぎないのだ。それなのにどうしたことだろう。
「あの、済みません……」
 謝ると、ヤマトタケルは不思議そうに眼を眇めた。
「何で謝る?」
「だって、おかしいでしょう?」
「おかしくなんてないぞ」
 そう言って、ヤマトタケルは不敵に笑む。言葉と笑みにその心を図りかねていると、玄関を上がった彼に腰を引き寄せられる。口付けを乞いたくなる距離。頬に触れる手。そして唇が囁くように言った。
「そろそろ一緒に暮らそうと思ってたところだ」
 甘やかな言葉に、また顔の火照る思いがした。喜びに表情が崩れてしまう。この溢れてしまいそうな幸福を、どうしたらいいのだろうか。






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