神籬の肩を押してくる力はさほど強くはなかったが、押されるままに倒れれば、この身を跨いで覆い被さってきた。彼に見下ろされるというのは新鮮な光景だ。下がってくる横の髪を指で梳いてみれば、その瞬間だけ彼は目を細めた。
「どうかしたか?」
「……別に。俺にだってそういう気分になるときもあるというだけで」
 そう言って、彼はそっと目線を外す。白い頬は、髪の影にあっても分かるくらいには薄紅に染まっていた。
 あまり言葉を重ねようとすれば、彼は羞恥極まって背を向けてしまうだろう。ここは黙って受け入れるが得策だ。珪孔雀石は答えの代わりに、その薄い唇を親指でなぞった。
 彼はやけに長い瞬きをひとつする。そして唇に触れる手から逃れ、鼻先を寄せた。交わる目線は彼が目を閉じることで断ち切られ、引き換えのように唇が重ね合わされる。微かに混ざる吐息は、微々たる熱を孕んでいた。






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