夜も帳が降りきり、室内を照らすのは黄金の灯明ばかり。
 その暖色の灯りに照らされて発光するかの如く光る満月色の髪を、ダイダラボッチは何とも言えない気持ちで見つめた。その下には若葉色した瞳が淫靡に光る。昼間は清廉な色をしていた眼が、今となっては妖しく媚びるように揺らめき光る。直視できない色だ。
「ねぇ、ダイダラボッチさん……」
 理路整然とした物言いをする唇が、そんなことも忘れてしまったかのように拙く囁きかける。それでいて男を的確に煽るような声色。緩やかな弧を描く唇は淫らに艶めき、熱っぽい吐息を頬に吹きかけた。
「しませんか……?」
 湾曲的でありながら直接的でもある問いかけに、ダイダラボッチは喉を鳴らす。強請る瞳から目を逸らせて下を見れば、はだけ気味の浴衣からその胸元が見えた。豊かな膨らみなどない、いっそ逞しいほどの胸板だ。だがどういうわけか、その肉付きの良さから目が離せなくなる。
 そうしているうちに、太股に手を置かれた。思わせぶりに手を這わせては、身を寄せてくる。さらに近くなる距離に、彼の香が鼻を掠めた。目の眩むような思いがした。
「だめ、ですか……?」
 耳元で吐息交じりにさらに強請られる。そのいやらしいまでの熱さに耐え切れなくなり、ダイダラボッチはその身体を押し返し、床に倒した。
 見下ろす端正な顔。反動で露わになる姿態。驚きと痛みで若干の強張りを見せる表情と身体に言い知れぬ充足感を感じつつ、苦し紛れに言い放つ。
「アンタが煽ったんだからな、オモイカネ」
 体勢は言わずもがな不利だ。なのにオモイカネは勝ったように嫣然と笑み、猫のように瞳を輝かせた。
「そうこなくては」
 待ち焦がれたと言わんばかりの指先が、頬を撫で、首筋をなぞり、絡めてくる。早くと口付けを強要してくる緩やかな力に、勝てる意志の強さはなかった。






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