扉越しに聞いた声に、衝撃を受けた。動揺に早鐘を打つ心臓を、オズは手でそっと押さえる。
 まさかエリオットからあんな声を聞くとは思わなかった。普段から頑として揺るがない意志を持ちながら、しっかりと地に足をつけているエリオット。そんな彼が熱で擦れた声に、酷く切なく恋い焦がれているような色を乗せるなど、誰が思おう。
 そんな声で、エリオットは“アーネスト”という名を呼んだ。ギルバートの様子から察するに、彼もその人物を知っているようだ。ナイトレイの人間には違いあるまいが、一体どういう関係にあるのか。オズには、そこにエリオットがギルバートに執着する理由があるように思えた。
 暴きたい。暴いてその全てを掌握したい。オズの心臓が逸る期待に高鳴った。

「目が覚めた?エリオット」

 そろりと扉を開けて中を覗けば、二つの目線に晒される。オズはそれを笑顔で受けとめた。

「ナイトレイだからおとなしくしてろってギルに言われたんだけどね。誰もいないみたいだから、ここまできちゃった」

「貴様ら……ッ、さっさと帰ればいいものを……!」

「まぁまぁ、エリオット。熱あるんだから、怒らない怒らない」

 オズの一言が癇に障ったのだろう。飛び掛かりそうになるエリオットを、ギルが寸で押さえた。熱で力のないエリオットは、抵抗もできないままベッドに縫い付けられる。

「そんなことよりさ、聞きたいことがあるんだ。ねぇ、エリオット?」

 そっと扉を後ろ手に閉め、ベッドに歩み寄る。訝しむ両者の視線をものともせず、ベッドに腰掛けてはエリオットの辛そうな顔を覗き込んだ。揺らぐ蒼い眼に映る自分は、酷く質の悪い笑顔を浮かべていた。

「アーネストって、誰?」






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