どうすれば、いいか分からなかった。水晶体に映り、見える黒髪と目を広げるエリオット。従者であるギルバートの答えは「選べない」。 どちらとも大事といった。義弟として、主人として。純粋な気持ちなのだろう。だけど、自分のこの渦巻く感情はなんだ。どろりと流れぬ、この薄汚れた感情。ギルバートを、誰にも盗られたくない。 孤独だった自分と繋がりを持った存在。それを、自分の失われた十の年によって、自分だけのではなくなった。養子になったナイトレイ家の嫡子。 エリオット=ナイトレイ。彼が、盗ったのだ。悔しいとか憎いとかそんな感情だけじゃない。寂しくて辛くて羨ましいのだ。浅ましい嫉妬が、目の前を覆う。 「…ッ離せ…!」 「エリオット」 「貴様、自分が何を言ってるのか分かっているのか!お前は、父上もナイトレイ家も全てを侮辱している…!ベザリウスなど、ベザリウスなどと一緒にされるなど…!」 怒りに耐え切れぬと言った様子のエリオットが腕を解いて食ってかかる。しどろもどろになるギルバートとエリオット。そして自分。一線を引かれたような疎外感に、堪えきれなかった。 「ギル。……お前はオレを」 自分より背の高い従者の黒髪を手にとって、頬を掴んで目を覗き込んだ。そのとき、 「オレの義兄に触るな……!!」 |