久々に訪れたナイトレイでエリオットと出くわし、彼の部屋に呼ばれた。何事かと思い訪れれば、しかめ面をしたエリオットに足をかけられ床に転ばされる。目を白黒させたギルバートを、エリオットは不機嫌も顕に見下ろした。 「見てればお前、何度もオズ=ベザリウスに足蹴にされてたな」 怒りを押し込めた冷ややかな声で言われ、ギルバートは思わず身を固める。怒りへの怖れというよりは、威圧への畏れがあった。 黙っていると、肩へその足を押しつけられる。勢いを殺さないそれは、衝撃と痛みを強くギルバートに与えた。 「いい気なものだな。そんなにあんなのがいいか」 体重を乗せて足を押しつけられる。肩口に食い込むブーツの僅かに高いヒールが、さらなる痛みを呼んで思わず顔をしかめた。それにエリオットは皮肉ぶった笑みを浮かべる。 「痛いか、ナイトレイから逃げ出した臆病者が」 「エリオット……ッ!」 堪らず声を上げると、エリオットは笑みを消し、限りなく無表情に近い怒りの形相でギルバートを見た。 「仮にもお前はナイトレイの人間だ。誇り高きナイトレイの人間が、他の人間に、殊更ベザリウスの人間なんかに踏まれていいと思うなよ」 肩から足が退けられたと思えば、胸倉を掴まれ引き寄せられる。間近で見たエリオットの目付きは、知らぬ内に男のそれへと変わっていた。 「お前を足蹴にしていいのは、この家の嫡子であるオレだけだ」 有無を言わせぬ威圧に、ギルバートは息を詰まらせる。言葉によって付けられた首の鎖が、まるでナイトレイの絆のようで、酷く息苦しい。だが鎖の先にエリオットの手があるのだと思うと、逃れるなどという考えは終ぞ浮かんでこなかった。 |