垂れ下がる鎖が光を鈍く反射するのを、ロッティは心地よい気分で見ていた。
 鎖の末端には、ナイトレイの末子が膝立ちの姿で両手両足を繋がれている。手荒な拘束により着崩れた白いシャツと、汚れた黒いスラックスだけをまとう彼の姿は、ロッティを酷く昂ぶらせた。

「いい格好ね、坊や」

 ヒールを高鳴らせて歩み寄り、細い顎を捉えてエリオットの顔を上向かせる。彼の鮮やかに蒼い瞳は、怒りに燃え滾っていた。

「放せ」

「残念ねぇ、それは聞けない話だわ」

 エリオットの耳に唇を寄せ、その耳殻を甘く噛む。途端に彼は身体を跳ねさせ、信じられないといった表情でロッティを見た。驚愕の顔は見た目にも心地よかった。

「あはは!感度良好だね」

「な……ッ!何を馬鹿なことを!」

 咄嗟に顔を赤らめたエリオットが噛み付いてくる。だが明らかな動揺を見せる彼など、ロッティにはどうしたって愛らしい小動物にしか見えなかった。

「初なのね。可愛いわ」

 わざと舌先を十分に湿らせてから、エリオットの耳に舌を差し入れる。水音を鳴らせば、聴覚を犯されている彼は声を押し殺して悶えた。ピアスを噛む堅い音にさえ、肩を震わせる。
 エリオットは逃げようとするが、両手両足を拘束されている上にロッティに頭も捉えられて、逃げようがない。何より先のチェインとの戦闘で、大幅に体力を削がれている。袋の鼠も同然だ。

「や、めろ……ッ」

 どうしようもないと知りつつも抵抗するエリオットに、ロッティは小さく笑い声を上げた。耳への愛撫だけで、頬を紅潮させ息を荒げる彼が、可愛らしくて仕方がなかった。

「坊やが可愛く鳴いてくれたら、考えてあげる」

「は……?」

「小生意気な言葉ばっかり吐くこの口をだらしなく開けて、快楽に喘ぐのよ。簡単でしょ?」

 言葉の卑猥さを理解したのか、エリオットはその顔に羞恥の色を顕にした。返す言葉も出ないようだ。引き結んだ唇を震わせている。
 こんな初心の少年を汚す喜びに、ロッティは人知れず心を震わせた。殊にエリオットは性的なものとは無縁の少年だ。胸に満ちる悦楽も一入だろう。
 込み上げる笑みを禁じえないまま、隠しナイフを手に取る。切っ先をエリオットの胸元にあてがい、シャツのボタンを全て引き千切った。そうして顕になった彼の肉体は、誰の侵入も許していない色白さを見せた。

「やめろ、ふざけるなッ!」

 ジャラ、と鎖を鳴らして逃げようとするが、せいぜい身を捩らせるのが関の山。逃げられはしない、逃がしはしない。

「ダメよ、坊や。可愛く鳴いてよがってくれなくちゃ。ね?」

 首筋に唇を落とす。軽く吸い付くだけの口付けは鬱血痕を残さなかったが、付けていたルージュだけが白い肌に薄らと残った。

「約束通り、隅々まで可愛がってあげるわ。エリオット坊や」

 堅く目を閉じて顔を背けるエリオットに、ロッティは子をあやす母のように囁いた。










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