最近、昼寝に最適な場所を見つけた。多くもなく少なくもない木々に面した、広い縁側。その全面に均等に行き渡る日差し。冬はもちろん、風通しがよく夏も以外と過ごしやすいそこは、絶好の昼寝スポット。
 斑は招き猫の姿でその縁側に伏せると、惰眠を貪るべく目を閉じた。日差しが少々眩しいが、そこは昼寝の醍醐味ということで問題はない。ちょうどよい暖かさは、すぐさま睡魔という手を伸べてくる。
 今にも眠りに落ちようかというときに、床が小さく軋んだ。誰かが来たようだ。徐々に近づいてくる足音を、斑は無理矢理無視して目を閉じ続ける。

「あれ、ポン太……じゃなくて、ニャンニャン……でもないな。えーと、ニャン太先生だっけか」

 ことごとく名前を間違えるその家の住人に、斑は怒りを爆発させそうになるが、ここは敢えて黙って寝た振りを続けた。人の子の相手など一々していられない。それでなくとも、夏目という小生意気な人間には手を焼かされているというのに。
 住人はそのまますぐそこの自室へと入り、しばらくごそごそと何やら物色するような音を出した。着替えでもしているのだろう。夏目も学校とやらから帰ると、すぐに着替えをはじめる。一々着るものを替えるなど、人間は慌ただしくて嫌だ。
 やがて住人が再び近づいてきた。断りもなく無遠慮に隣に座っては、こちらの気持ちなど伺いもせず背を撫ではじめた。この住人といい夏目といい、何故人間は自分のことをこんなにも猫扱いするのか。

「先生は最近、ここがお気に入りだなぁ。確かにここは一年通して過ごしやすいけど。夏目のところは、夏暑くて冬寒かったりするのか?遊びに行った限りじゃぁ、そんな風でもなかったように思うけど」

「煩いぞ、小僧。人がせっかく昼寝しているというのに、隣でぶつくさ喋るでないわ」

 黙っていようと思った。思ったのだが、あまりにもつらつらと一人喋るものだから、つい文句を言ってしまった。斑は自身の気の短さを悔やみつつも、隣でのほほんと自分を見やる住人を睨んだ。

「スマン。声大きかったか?」

「大きい小さいの問題ではない。喋っていること自体が煩いのだ」

 またしてもスマンと謝り、眉尻を少し下げた住人に、斑はふんと鼻で荒々しく息を吐いた。そんな顔をしたって、許してなどやらない。
 しばらくの沈黙のあと、隣から暢気な欠伸が聞こえた。その直後に住人が横たわる気配がして、斑は薄目を開けてみる。
 住人は斑の招き猫の体を囲むようにして寝転がっていた。その顔はすでに眠りに落ちているようで、目蓋が緩く閉じられている。先に寝ていた自分よりも早く寝てしまっている住人に、斑はため息を吐いた。
 斑はそのまま目を閉じる。睡魔の手はあっという間に斑の体にまとわりついて、そのままするりと落ちた。





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ニャンコと田沼と一緒に寝たい。






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