「鷲掴みですか」 「んだよ、悪ぃかよ」 「悪くはないけど。まぁエリオットらしくていいんじゃない?」 お土産と称して持参したケーキを、鷲掴みにして頬張るエリオットに、オズはそう答えた。プライドは高いけれども、気品があるとは言いづらい彼の性格を考えれば、おかしい話ではないと思ったからだ。 「でもそういや、あのブレイクすらフォーク使ってたよなぁ」 ふと思い出したレインズワースの使用人は、慇懃無礼な性格をしつつもちゃんとフォークでケーキを食べていた。とはいえ彼の男は男で、皿ごといった口ではあるが。果たしてどちらが行儀悪いか、オズには判断つかない。 「ブレイク?誰だよ」 「えーと……ちょっと変わった知り合い……?」 正体を明かしていいのか解らず言葉を濁すと、エリオットは怪訝な目線を向けてきたが、言及はしないでくれた。 ケーキにフォークを刺しながら、オズはエリオットの所作をさり気なく眺めた。パッと見は豪快で、ふてぶてしささえ覚える。だが唇についた生クリームをさらう舌や、指についたものも舐める様子には、何かいただけないものを感じる。誰が見てもそうなのか、自分の見方が悪いのか。 「エリオットさ、そうやって食べるの辞めたら?」 「ぁあ?」 「だってさぁ……」 オズは身を乗り出して、エリオットの顎を捉えた。顔を寄せ、彼の口の端についた生クリームを舐めとる。その瞬間の甘ったるい香りに、少しだけ目眩を覚えた。 「なんかエロいもん、エリオット」 エリオットは途端に真っ赤になった顔を引きつらせ、動揺の勢い余ってがたりと立ち上がった。 「なッ、ば、馬鹿かテメェッ!!エロいのはどっちだッ!!」 テーブルを両手で叩きながら目を吊り上げるエリオットに、オズは悪戯っぽく笑って肩を竦めてみせた。口の中に広がる甘味は、いつまでも舌の上に残っていた。 |