ツンとした目付き、ツンとした横顔、ツンとした毛先、そしてツンとした性格。オズはそんなエリオットの全てが好きといっても過言ではなかった。隣に居るだけでも幸せ。言葉を交わせればもっと幸せ。話し掛けてきてくれたら最上の至福。
 だがしかし、欲を言えばデレが欲しい。おびただしい量のツンの中に、一握りのデレ。それにはどんな破壊力があるだろうか。デレたエリオットに殺されてしまいたいと思う日々に、オズは溜め息を吐く。

「はあ……」

「何とも盛大な溜め息だな」

 ぼんやりとしていたところに、突然現れるエリオット。オズは見開いた眼に彼を映し、俄かに上がる体温を覚えた。

「万年幸せそうなお前でも、溜め息吐くんだな」

「うん。エリオットのこと考えてたから」

「寝言は寝てから言えよ」

 平手で軽くはたかれる。手加減されたそれに痛みなどなく、ただ彼への恋情に熱を帯びるだけだ。弛む口元を堪えてエリオットをねめあげれば、彼はやはりツンとした態度でオズを見ていた。

「寝言じゃないよ」

「寝起きみたいな頭して、何言ってやがる」

「だからただの癖だって!」

 幾度となく繰り返されたやり取り。取りつく島もなさそうなエリオット。そんな時間も好きだが、そんな彼も好きだが、別の時間や彼も欲しいところ。
 思い切ってエリオットの肩を掴み、お互い真っ正面に向き合って、見つめあう。ただ驚いて眼を見開く彼に、オズはずいと詰め寄った。

「本当にエリオットのこと考えてたんだ。そんだけお前のことが好きなんだよ、解る?もうどうしようもなく好きで好きで好きで―――」

「―――わ、解った!解ったから止めろ、もう!」

 重ねに重ねて告げた“好き”という言葉に、言われ慣れないエリオットは早々に音を上げた。オズの手から逃れようとする横顔は、仄赤い。羞恥に顔色を変える彼は、いつになく可愛かった。

「エリオット!」

「う、うるさいッ!」

 ツンと尖ってみせるエリオットだが。その鼻先は尖りきれていない。隠しきれない赤い耳は、彼の“隙”。彼の“好き”。
 エリオットはしばらく顔を背けたままだった。次第に引いていく耳の赤らみ。彼の熱が冷めていく気配。
 だがふと振り向いたエリオットの、恨みがましい眼差し。その目元の赤さに胸撃たれ、オズは目を眩ませる。これはもう堪らない、とオズは彼に隠れて呟いた。エリオットのデレはどんな弾丸よりも鋭い。





彼の弾丸、shooting heart!
(殺されました)





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ツンデレの模索に失敗。






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