ソファでのうたた寝から目覚めたエリオットの一連の動作は、ひどく懐かしいものだった。 「アーネスト……」 寝呆け眼で寄ってきたエリオットは、目を擦りながら甘えるように手を伸ばしてくる。それは幼いときの彼の、寝起きの仕草。アーネストは驚きつつも、抱きついてくるエリオットをそっと抱き締めた。 「エ、エリー?」 すでに幼子ではない体を膝の上に乗せながら、名を呼ぶ。寝呆けるにしては些か行きすぎている所作だ。おかしいと思い、その顔を覗こうとすると、エリオットは眠そうに唸ってアーネストの肩に額を擦り寄せた。 「まだ、ねむい……」 舌足らずな雰囲気で紡がれる言葉は、幼子そのものだ。体をそのままに、内面だけが幼少に戻っているという不可解な現象が、今まさに愛しい弟の身に起きている。アーネストは絶句した。 突然のことに混乱し、アーネストは思わずエリオットの体を強く抱き締める。膝へかかる重みや服越しの体の感触は、成長途中の少年そのもの。だが言動は幼少時の拙いそれというギャップが、頭の回転を鈍らせた。 「ぅうん、くるしい。アーネスト」 身動ぐエリオットに言われ、アーネストは我に返り腕の力を緩めた。完全に目を覚ましたらしいエリオットは、鋭さを欠いた眼差しで見つめてくる。久しい愛らしさだ。無論、然るべき状態の彼も愛しいことこの上ないが。 頬に手を添えれば、ふにゃりと蒼い眼が細められる。白桃の頬が喜色に染まる。大人びてきた顔で表す素直さは、心だけが幼いが故。通常ならば、見ることは難しい笑顔だろう。 「……目、覚めたか?」 「うん!」 大きく頷いては、また甘えて抱きついてくる。このままではよくないだろうことは解っているが、少しの間くらいならいいかと、アーネストは少し跳ね気味のエリオットの髪を撫でた。 ‐‐‐‐‐ 幼少のエリーが甘えん坊だったかは、甚だ疑問だが。 |