普通の猫が飼いたいと、常々思っている。ルームシェアをしている相方は立派な猫の耳を持っているが、それだけだ。若干猫っぽい性格をしているだけの、男。 「猫が飼いたいなぁ」 「オレの耳を見ながら言うんじゃねぇ」 「だってさぁ……」 その性格のごとくツンと尖った耳に手を伸ばした。手触りは猫のそれと酷似している。否、猫だ。耳だけは猫なのだ。眼を閉じれば猫に触れているような気になれる。 「さ、わんな……ッ」 だが持ち主は触れられることに嫌った。くすぐったくて仕方ないらしい。しつこく触ると腕に噛み付こうとしながら振り払い、逃げてしまう。なぜ噛み付こうとするのかは、解らない。本人も無意識の内のことで、理解していないという。 「そんなに耳くすぐったいの」 「そうだよ、だから触んなッ」 勢い良く頭を振って逃げた彼の、目尻が赤い。ギリ、と歯軋りをするその口端からは、常人のそれより僅かに鋭い犬歯が覗いた。まるで威嚇のようだ。猫のようだ。可愛げのない、人に懐かない、猫のようだ。 「……本物の猫、飼いたいなぁ」 「飼いたきゃ飼えばいいだろう!」 「だってねぇ……」 動物の世話なんて、こなせる自信がない。目の前の猫男にさえ手を焼いているのに、どうして動物が飼えよう。 ‐‐‐‐‐ 猫耳を活かそうと試みたが、残念に終わった結果。 |