義兄は何かに付けて自分を抱くようになった。誰かの許しを求め貪るかのようにこの身を掻き抱いては、事が終わると逃げるように部屋へ帰っていく。義理とはいえ弟の身体を荒らすだけ荒らして、後の罪悪感にただ背を向けるだけとは。馬鹿な義兄め。

「馬鹿が……、ッ」

 空回りする熱が残した残滓を処理しながら、エリオットは届きもしない悪態を吐いた。強めのシャワーを浴びながら、義兄の残していった白濁する汚れを掻き出す姿があまりに情けなくて、陰口の一つや二つ吐かずにはいられない。
 本来ならば残していった相手が、義兄が処理するべきもの。エリオットは自らの下肢から流れ落ち、排水溝へ逃げていくそれに奥歯を噛んだ。

「何なんだ、クソ……ッ!」

 義兄がなぜ自分を抱くのか、なぜ自分は逃げられずに抱かれるのか、不可解なことがありすぎた。嫌なはずなのに、拒絶しきれない自分が解らない。何より義兄が自分を慰みの対象に選んだ理由が解らない。
 頭が混乱する。眩暈がする。壁に打ち付けた拳からは痛みしか得られず、忌々しさに舌打ちをした。
 ふと見下ろした排水溝の先には、ひたらすら闇がわだかまっていた。その闇には自分の汗や義兄の残したもの、あの快楽でさえも流れ込み混ざりあって、混迷としているのだろう。気色悪い。凄まじき汚点。

「もう……嫌だ……」

 その闇の先には何もない。今の自分たちが行き着く先のように。
 エリオットは気怠い身体を持て余しながら、その場に崩れ落ちた。何もかもが嫌になって、このまま消えて居なくなりたくなった。





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しかしこの義兄、最低である。






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