いつもの悪夢から目覚めたエリオットの体は、まるで亡骸のごとく冷えきっていた。多量の汗が冷やされたことによって、冷えてしまったことは解っている。だが解っていても、痛々しい。
 暗闇の中、一人その身を抱えた彼が求める人間が、自分ではないのは理解していた。思いつく限りでは、彼の従者辺りだろう。とても信頼しているようだったから。
 その従者は、今この場にはいない。だからというわけではないが、恐怖に打ち震える彼を抱き締めずにはいられなかった。せめて気休めくらいにはなれないかと思う。義兄として彼にしてやれる、精一杯のこと。

「エリオット……」

 零れ落ちかけた言葉は、エリオットの耳へと届く前にどうにか飲み込んだ。いまさら囁いたところで、もう手遅れなのだ。

『お前がオレを選んでくれたなら、オレはお前の骸すら、もう手放したりしないのに』





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某さんに捧ぐ。






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