振り下ろした手のひらが痛い。痺れにも似た痛みが手のひら一杯に響くが、それはきっと頬を張られた彼の比ではないだろうとヴィンセントは微笑んだ。
 何の前触れもなく叩いたものだから、彼、エリオットはよろめいてその場に尻餅をついた。驚愕と憤怒で燃える蒼い眼が、ヴィンセントを鋭く見上げている。

「気に入らないなぁ」

 呟くと、エリオットは訝しげに眉をひそませた。

「オズ・ベザリウスなんかと馴れ合ってるみたいだし」

「な、馴れ合ってなんか……!」

「本当なら君に従者がつくのも嫌だったのに」

 手元の鋏を手にして、テーブルに放置していた人形を突き刺す。一瞬のけたたましい音に、エリオットが息を呑んだ。
 萎縮とまではいかないが僅かに怯んだ彼の様子に、ヴィンセントは少しだけ笑みを深める。隙のできやすい彼の未熟さが、愚かしいまでに愛しい。
 突き刺さった鋏を引き抜いて、未だ座り込んだままのエリオットに歩み寄る。彼の前で膝をつくと、その白い喉元に鋏の先を突き付けた。

「僕だけのものにしてあげるよ」

 突き付けられた鋏に動揺しつつも、エリオットは気丈にヴィンセントを睨み続ける。

「……何をするつもりだ」

「何?そうだなぁ……」

 鋏の先を下に向け、そのまま下方へと下ろす。切っ先が服に引っ掛かり、鋭いが故に布を裂きながら降りていくのを、ヴィンセントは恍惚とした気持ちで見つめた。

「まずは凌辱とか、どうかな……?」

 晒された腹に、鋏の先を押し当てる。痛みに顔をしかめたエリオットに、愉悦が背筋を走った。





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猟奇的な彼氏?






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