バイトの金をこつこつと貯めてようやく購入した、ボーカロイド“田沼要”。店頭でたまたま見かけてから、ずっとこの時を夢見てきた。抑えられない沸き上がる歓喜に、夏目は表情を歪めた。
 PCから繋いだコードを伝って自分の基本的な情報を送り、起動のボタンを押す。表示されたバーとパーセンテージが量を増すに連れて、自分の心臓も高鳴る。今は人形の彼に命が宿る瞬間を、夏目は今か今かと待ち望んだ。
 やがてゆっくりと開かれる目蓋。微かに揺れた柔らかな黒髪の下で、温かな光を湛えた黒い眼が顕になる。ぼやけていた焦点が合い、夏目と目を合わせると、ふわりと表情を綻ばせた。

「はじめまして、マスター」

 ころりと零れた甘やかな声に、本当に彼の主人になったのだと実感した。高からず、低すぎもしない声が夏目を主人と呼ぶ。その何とも言えない幸福感に、夏目は思わず起動したばかりの田沼を抱き締めた。

「うわッ、マ、マスター?」

「よろしくな、田沼」

 改めて目を合わせて言うと、田沼は嬉しそうに笑った。





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某アンドロイドネタ。だが設定が全く活かされていない。






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