ちょっとだけサイケ登場
モブ臨有り
「……はぁ…」
俺、折原臨也はソファに座りながら小さく溜め息をついた。
原因は目の前の光景にある。
数時間前、恋人である平和島静雄が家にやってきた。正直シズちゃんから来るなんて珍しいから内心嬉しかったんだけど、当の本人は現在自分の向かい側にあるソファに座りサイケと楽しそうに喋っている。
…なんでシズちゃんの隣にサイケがいるのかなぁ……。
別に悪い訳では無かったが最近仕事ばかりで全然会う機会がなかった。
そして今日、久しぶりに会えたにも関わらずシズちゃんはサイケと喋りっぱなし。
そう、これは唯の嫉妬だ……。
まさか自分と全く顔が一緒なサイケに嫉妬してるなんて、と内心自嘲しながら二人の会話を黙って聞いていた。
「…なぁサイケ、俺の事好きか?」
…――はっ!?
まさかの質問に俺が目を瞠れば、サイケは笑顔で答えた。
「うん!好きだよ」
「そうか…臨也は?」
「えっ!?俺も!?」
「当たり前だろ。で?どうなんだ?」
「えっと、俺は……」
本当はサイケのように“好きだよ”と言いたいけれど、この俺が素直に言えるわけもなく、
「ふ、普通かな…」
「……そうか」
シズちゃんは溜め息をつきサイケの頭を撫でた。
「お前もサイケみたいに素直だったらなー」
サイケは気持ち良さそうに目を細めている。
…何それ
――何かが切れた音がした。
「…そんなにサイケがいいならサイケと付き合えば?」
「…あ?」
「どうせ俺は素直じゃないし?そうだよシズちゃん、サイケと付き合っちゃえばいいんだよ!ほら、顔だって俺と全く一緒だしさ!!」
言いたくもない言葉がどんどん出てくる。
「そうだよ、そうしなよ。サイケもシズちゃんのこと好きって言ってるしさ。うん、それがいいよ…」
「おい臨也…」
「何?あ、もしかして邪魔だった?安心してよ、用事思い出したから今からちょっと行ってくるね」
そう言い立ち上がればシズちゃんが何か言ってたけど聞こえぬフリをして早急に部屋を飛び出した。
本当は用事なんて無い。でもあれ以上あの空間にいるのが耐えられなかった。
「……あれ?此処どこだっけ…」
ふと気付けば見覚えのない路地裏にいた。
「やばっ、迷ったかも…」
池袋に比べ新宿では路地裏に入ることはあまり無いため完全に迷ってしまった。
―…まぁ適当に歩いてれば何とかなるかな。
その考えが浅はかだったと気付くのに、そう時間はかからなかった。
ガンッ
突如聞こえた音と鈍い痛みに俺は意識を失った。
「…ん……?」
次に俺が目を覚ませば、そこは先程の路地裏ではなく何処か倉庫の様な場所にいた。
しかも御丁寧にしっかりと手首は縛られ服は脱がされていた。
「お、目ぇ覚めたか?」 「…どうせなら目覚めたくなかったけどね」
さっきまでは自分の事しか見ていなかったが改めて周りを見れば話し掛けてる男以外にも数名いた。
「で、こんな事までして俺に一体何の用かな?」
「…アンタ、よくこんな状況で聞けるよな。それに…――分かってるくせに」
その男はニイッと笑うと俺の上に跨った。
それを見て何をされるか瞬時に悟り静かに目を閉じた。
20101002
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