バレンタイン小説@(♀var) | ナノ

 
今日は2月14日、世で言う『バレンタインデー』だ。だからだろうか、いつもより男子が落ち着かない様子でソワソワしている姿をよく見た。ただ時折頬を緩めた男子も数名見掛ける。その男子達は多分チョコを貰ったんだろう。
そんな事を思いながら私は自分の教室に入った。


「はい新羅!」
「あ、臨美。今年も市販のチョコありがとう」
「最初の部分要らないしチョコ貰えるだけ感謝しなよ」
「ごめんごめん。でも嘘は言ってないだろう?」


新羅の言葉は確かに間違っていないため思わず押し黙る。私だって女の子なんだからバレンタインデーにはチョコだってあげる。ただ手作りは時間がかかって面倒だから市販のバレンタインデチョコを買うのだが。けれど今回のバレンタインでは一つだけ手作りチョコがある。理由は簡単、好きな人が出来たから。


「そう言えば門田君と静雄の姿が見えないね」
「ドタチンならさっきトイレの近くで会ったよ。序でにチョコも渡しといた。まぁシズちゃんは知らないけど…」


そう言いバッグの中から一つチョコの入った袋を取り出す。


「どうせシズちゃんのことだからチョコ貰えないんだろうし、それはちょっと可哀想だからあげてくるよ」


そう新羅に言うと私は再び教室を出ていきシズちゃんを捜した。…手には手作りチョコを持って。














「全っ然見付からないし…」


暫く捜し続けていたがシズちゃんは一向に見付からない。時計ではもう放課後だ。教室を出ていったのが確か6時間目が終わった後だから…かれこれ30分は捜し回っている事になる。
流石の私も疲れてきて僅かにスピードを落とせば何処からか声が聞こえてきた。今私がいるのは屋上へ向かう階段。ということは多分この声は屋上からだ。そう思い内容が気になった私は階段を登り僅かにドアを開けて覘き込む。そこには頬を赤らめチョコを渡す女子と照れたような表情をするシズちゃんの姿があった。


『平和島君、その……もし良かったらこれ……』
『え、あ…ありがとうございます……』
『そ、それとね?あの、実は私、ずっと前から平和島君の事が―――』


そこから先は聞きたくなかった。


「はぁ…はぁ………」


気付けば私は教室に戻っていた。


「おかえり臨美、遅かったね」
「新羅…ドタチン……」


教室には、もう下校時刻にも関わらず新羅とドタチンがいた。


「二人とも何でいるの…?」
「いや、さっき岸谷から臨美が静雄を捜しに行ったって聞いたから、どうせなら一緒に帰ろうと思ってな」「そう、だったんだ……」「あれ?静雄は一緒じゃないの?」
「え、ああ、うん……見付けたは見付けたんだけど丁度チョコ渡されてる所でさ、声掛けたらマズイと思って戻ってきたんだ」


私の言葉を聞き「へぇ、静雄チョコ貰ってたんだ」と言う新羅に持っていたチョコを渡す。


「はい、もうこれ要らないから新羅にあげるよ」
「え?でもこれって静雄にあげるやつじゃないの?」「うん…でもシズちゃん他の子からチョコ貰ってたから要らないと思うし」


だからあげる、と無理矢理新羅に渡すと自分の机に行きバッグを取る。


「それじゃあ私、先に帰るね!」
「え!?ちょっと臨美!?」


待ってよ、と言う新羅の引き留める声を無視して私は教室を飛び出した。



20110214

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