「ハッピーバースディ、シズちゃん!」
シズちゃん家の玄関が開いた瞬間、俺は言った。
「…色々言いたい事はあるが先ず、何で家に居んだ」
「ふふっ、シズちゃんの家の合鍵はとっくに持ってるからね」
「取り敢えず返せや」
「ヤだよ仮にも恋人でしょ」
拗ねたように言ってみたけど無視されてシズちゃんは一人今へ行ってしまった。まぁ居間に行ってからのシズちゃんの反応も楽しみだけど。
「……あ?」
シズちゃんの気の抜けた声に思わぬ笑みが溢れる。けどシズちゃんの表情が見たいから俺も居間に行き横から顔を覗き込めば驚いた表情が見えた。
「…どうしたんだよコレ」
「どうしたって買ったんだよ」
ふふっと笑いながらソファに座る。シズちゃんの目線の先には1ホールケーキが置いてあった。暫く突っ立っていたシズちゃんだが俺の隣に座ってくる
「あ、そうだシズちゃん。プレゼントあげたかったんだけど何が欲しいか分かんなかったから今回は特別にシズちゃんの要望に答えちゃいます!」
ニッコリ笑顔で言えばシズちゃんは僅かに肩を揺らした。んー…何か反応が微妙だなぁ。
「何でも……?」
「うん何でも!」
そう言うと、シズちゃんは急に立ち上がり寝室に行ってしまった。…どうしたんだろうか。そう不思議に思ってれば直ぐシズちゃんは何か紙袋を持って戻ってきた。そしてそれを差し出してくる。何かと思い中を覗けば予想外の物が入っていて思わず固まってしまった。
「それ着ろ」
「いや着ろって……これを着ろと?」
引き吊った笑みを浮かべて恐る恐る言うとシズちゃんは何の迷いもなく頷く。
「いや…いやいやいや、流石にこれは無理でしょ!!」
「ぁあ?でもさっきは何でも要望聞くって言ったよなぁ?臨也くんよぉー」
「うっ…確かに言ったけどさぁ、何でシズちゃんがナース服なんて持ってんの!?」
そう、俺がシズちゃんから渡された紙袋にはナース服一式が入っていた。
「狩沢って奴から手前にって貰った」
あの二次元オタクが……!
思わず紙袋を握る力が篭りグシャッとなったが気にすることはない。
「っつー訳でさっさと着ろや」
「嫌だ!」
「そうか………だったら俺が着せてやるよ」
「はっ!?」
シズちゃんはニヤリ笑みを浮かべて言えば俺をソファに押し倒してきた。
マズイ、このままじゃ確実にヤられる。
「ちょ、シズちゃん!!」
「あ?自分で着たくねぇんだろ?なら俺が着せてやる」
そう言いコートに手をかけられれば俺は慌ててシズちゃんの腕を掴む。
「き、着る!着るから離れて!」
「よし、じゃあさっさと着てこい」
上からシズちゃんが退き無駄にかっこいい笑顔を浮かべながら言われ起き上がれば渋々紙袋を片手に洗面所に向かう。本当は着たくも無いが着ると言ってしまったから仕方がない。
「…似合わなくても文句言わないでよ」
「大丈夫、手前なら似合う」
何を根拠にそんな堂々と言えるのかと言いたくなった。実際には言わなかったが。
取り敢えず洗面所に行き改めて全て中身を取り出す。
「下着まであるし……」
これも着らなければならないのか。そう思うと無意識に溜め息が溢れる。でも、ここまで来たら後戻りは出来ない。なら全部着てやろうじゃんか。
この時の俺は何処か自棄になっていた。
20110128
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