「帰ろうか新羅」
「うん」
そのまま時は過ぎ放課後になれば途中まで帰り道が同じな新羅とは自然に一緒に帰っていて今回もそのつもりだった。
だが今日は普段とは違った。
「ほぉ、何帰ろうとしてるんだ?折原臨也」
「げっ、先生……」
通ろうとした教室のドアには今日俺を呼び出した社会科の先生が仁王立ちで立っていた。
「…折原、ちょっと話かある。単位減らされたく無かったら来い」
「うわ…横暴なんじゃないんですか?」
「そうでもしないとお前は来ないだろ」
何処か自信有りげに言うなと思ったが、まぁ実際その通りなので何も言い返せずにいた。因みに新羅はいつの間にやらさっさと帰っていた。
…もう二度と一緒に帰ってやるもんか。
内心一人で思っていると教師が歩き出してしまったため仕方なく着いて行く。もしこれ以上単位を減らされたら進級が危うくなる。
ただ、この教師とは正直二人きりになりたくなかった。顔は悪くなくて女子に評判が良く、男子からはそれなりに慕われている教師だが俺からすれば表面だけ取り繕っているようにしか見えないのだ。
そんなことを頭の中で考えていれば、いつの間にか社会準備室に着いていた。
「ほら、さっさと入れ」
促されるがままに先に中に入ると後ろから扉が閉まる音がした。
それから奥にある椅子に座らされ暫く説教を聞く羽目となった。
漸く説教が終わった頃にはもう空は暗くなっていた。
「じゃあ先生、俺はこれで帰「折原」」
言葉を遮るように名を呼ばれ、まだ何かあるのかと思わず肩を落とす。
「まだ何かあるんですか?」
「お前、その………彼氏とかいるのか?」
「は?」
しまった。教師相手に「は?」と言ってしまった。
だが教師は特に気にした様子は見せなかった。
「いや、あの……俺、男なんで普通は彼女かと思いますけど……」
「あ、ああ!そうだよな……で、どうなんだ?彼女、いるのか?」
「…いませんけど……」
生徒の恋愛事情でも気になるのか、この教師は。
俺は早く帰りたいため素直に答えれば「そ、そうか。突然聞いて悪かったな」と言われ早く帰るよう言われた。
「じゃあ、失礼しました」
そう一言言い俺は社会準備室を出た。
……その教師が薄ら笑みを浮かべて見ていると知らずに。
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あえて王道は避けました。
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