まさかの好きかも宣言



「…あの」
「ん?」
「どうしてそんなに見てくるん、ですか…?」


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俺、立向居勇気には悩みがある。
悩みって程のものではないのだけれど、とにかく、気になって仕方がないのだ。
視線が。




「おはようございます、綱海さん」
「………」
「…綱海さん?」
「あ、うんおはようさん…」
綱海条介さん。
この間仲間になったばかりの、サッカーも始めたばかりの、とにかく明るい人だ。
明るい人なんだ、けれど。


「…」
また、だ。
とにかくこの人は、俺のことを、逐一黙って見つめてくる。
最初はにらまれてるのかと思ったけど、それは真面目な顔を見慣れていないのと綱海さんが若干つり目気味なことからの勘違いとわかった。
何か気に障ることをしたわけでも無いようで、普通に話したりもするのだけれど。


(ものすごい、見てくる)


顔とか、何か全体とか、練習中も時々。
ちらちらとかじゃない、もう、見る時はじっくり見てくる。
まるでペットショップで子供が夢中になって犬猫を見るかのように。
自分で言ってて思ったけれど、もしかして俺ってそんなに危なっかしく見えるのだろうか…


とにかく最近そんなことばかり考えてしまう。
これでは色々と集中できない。見られていると落ち着かないとか、そこまで繊細な性格ではないと思っているけれど…ここまで、それこそ穴があくほど見つめられては。


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「え、俺、そんな見てた?」
「そんな、って…」


あんまりだ。
結構な勇気をふりしぼって聞いたのに!この人!


練習後にキャラバンに戻る前、また見られていたのでちょうどいいと思って綱海さんを捕まえて、聞いてみたは良いけれど。


「見てます!見てましたよ…!俺の勘違いじゃないです…!」


自意識過剰と思われたらそれはひどすぎると、必死に綱海さんを見上げて訴える。
というか、この瞬間もものすごく見つめて来てるじゃないですか綱海さん。


「…マジで、いや…見てたけど、見てたけどさあ」
「認めてくれますか!」
「でもそんなに見てると思わなかったなあ…」


俺の必死さとは裏腹に、綱海さんは桃色の頭をがしがしと掻きながらなんだか困ったように首を傾げていた。
…いや、困っているんじゃなくてこれは、
(照れてる…?)
心なしか顔がほんのり赤いような気がする。


「…あの、何か気になることがあるなら言ってもらえたら、それでいいんですよ」


とにかく、その訳が知りたかった。
いいことにせよ気に入らないことにせよ、何でこの人が見てくるのかが知りたかった。
これから一緒に頑張っていく仲間であるし、もしかしたら俺の動きに変な癖でもついてるのかもしれないし。
何より。


「俺、綱海さんともっと仲良くなりたいです、から…見るだけじゃなくて話して、ほしいです」


多分俺の顔も、目の前の綱海さんと同じくらいには赤くなっているんだろう。
実際、恥ずかしかった。


綱海さんもちょっとびっくりしたような顔でやっぱり見つめている。
仲良くなりたい、だなんて普通直接言うことじゃないと俺も思う。
それでも、見られているだけで、ずっとこのまま気になったままで終わってしまうのは嫌だったんです、綱海さん。


「………あ、ああ!わかった!」
恥ずかしさの残る空気を、綱海さんが張りのある声で一掃した。
ちょっとびっくりして体がはねてしまった。


「なな、なにが、ですか?」
「いやあ俺もさ!なんでお前が気になるのかわかんなかったんだよ!」
「は?」


どこかすっきりしたような顔で手を広げて話し始める綱海さんに、つい素で聞き返してしまった。いけない、相手は先輩なのに。


「なんだかずっとお前のこと気になっててさ、見てて、すげえ頑張ってるなあとか、転んだとか、すっげえ辛いもん平気で食べるのとか、転んだとか」
「も、もういいですから!」


そんな転んだ転んだ言わないで下さい!とさっきより確実に赤くなっている顔もそのままに綱海さんの話しを遮ろうとした。
と、手が動かなくなった。


綱海さんに、両手を握られていた。


「いまわかった」
「な、なに、なにがです…」


手を顔の前ぐらいで握られたまま、見慣れない真面目な顔で、至近距離でじっと見つめられる。
ああ、こんなに顔が近いのって、もしかしたら初めてかもしれないなあと気恥ずかしさを紛らわせる為にぼんやり考えていた。




「俺、お前のこと好きかも」


後輩だからとかじゃなくって、なんか、かわいいから、守ってやりたくなるよな。
そう言って、綱海さんはいつものような笑顔を俺に向けた。
なるよな、なんて聞かれたって俺にわかる筈もないです、そう言おうとはしたけれど。


まさかの理由に、とにかく顔が熱くて仕方なかったので、何も言えませんでした。






まさかの好きかも宣言








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こんにちは、ほしです。
今回は素敵な企画に参加させていただき本当にありがとうございます…もう主催のななさんに脚向けて寝れません。むしろ眠れもしません。
1番目のお題の『まさかの好きかも宣言』で小説を書かせていただきました。
普段は専ら絵描きなのですが、今回は数年ぶりに文をと。改めて文章って難しいと思いました。世の小説書きさんを尊敬します。
綱立というよりは綱→(←)立みたいな若干ややこしや状態になりましたが、楽しんでいただければ幸いです!
綱立もっと増えろ!ということで、ありがとうございました!


20100331/ほし
http://rossaroll.blog53.fc2.com/
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