君の心の境界線
(明日、逢いに行くよ)
「え?」
彼女の思わぬ発言に手に持っていたアイスティーを零しそうになる。
その光景を見つめる目の前の彼女はとても穏やかな瞳を揺らして微笑んでいた。
真っ直ぐに突拍子も無い発言をするのは最早彼女の専売特許とも言えるべき物になっているのだが、今回ばかりは私も動揺を隠せなかった。
口を動かそうとするがうまく動かない。嗚呼もう。
「――梨麻?」
「、本当に急なのね…
貴女のその行動力には尊敬の意を持つけど、自己中にも程があるわよこの馬鹿亜夢」
馬鹿とは失礼だなあ、と彼女は笑う。
失礼も何も、彼女は本当に馬鹿なのだ。
今まで目の前の彼女は最愛の彼に逢いに行くなんてアクションは起こさなかった。
時折寂しさを隠している素振りは見せていたが、それでも彼女は待つのだと頑なに動こうとはしなかった。
それなのに、三週間前届いた「暫く逢えない」の一言が綴られた手紙を読んだ瞬間、その時隣に居た私に向けて「そろそろ動くよ」と微笑んだのだった。
――私には彼女の思考回路が未だ掴めないでいる。
「……、彼に今逢えないと告げられたんでしょう?
何でその時に限って自分が動こうとするのよ」
言い方に多少の不満を含ませながら問うと彼女は先程見せていた微笑みよりも深い笑みを見せる。
それは子供の様な無邪気な笑顔にも見えたが――
私には覚悟を決めた綺麗な笑顔に見える。
呟かれた言葉には、亜夢の隠していた願いが込められていた。
「幾斗が、やっとあたしに助けを求めてくれたから」
君の心の境界線、越えてもいいですか?
(「逢えない」=「助けて」の方程式)
end
うちのサイトは大人設定だと漢字表記です。りまは捏造。
幾斗出てこないorz
亜夢は幾斗の事誰よりも分かってると良いですっ
100626
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