会いに行くよ



目が覚める。
息が上がる。
あぁ、夢か。
山本は、暗い部屋の中、深く息を吐いて気分を落ち着かせる。
今までにない絶望感。
とんでもなく嫌な夢を見た。

部屋の灯りを付けて、携帯を見る。
真夜中2時。
このまま起きているには、まだ早い時間。
山本は、さっきまで見ていた夢を思い出す。
獄寺が自分の元から消えてしまう夢。

「冗談でも笑えない」

山本はポツリと呟いた。


世界で1番大切な恋人。
悪態をついても、優しい言葉をくれなくても、自分にとって1番可愛い人。
絶対に離したくない。
何度も何度も好きだを繰り返し囁いて、やっと気持ちに答えてくれた、照れ屋な恋人。
それをなくす夢なんて。

山本は、勢い良く立ち上がって、台所に向かう。
ジャーと水を出し、一気に飲み干す。
そして、自分の部屋に戻り、もう1度布団に潜ろうと思った時、枕元に置いてあった携帯が慎ましやかに光を放っているのが見えた。

こんな時間に?

携帯の画面には、メール着信の知らせ。
大好きな人からメールが届いていた。
件名も本文すら、何も書いていない。
でも、獄寺からの、精一杯のメッセージ。

山本は、すぐに服を着替え、サンダルをつっかけて獄寺の家まで道を走る。
ずっと走りっぱなしの15分。
それも楽しい。

獄寺の部屋の窓から灯りが漏れている。
ドンドンと乱暴に扉を叩くと、「うるさい!」と怒鳴りながら獄寺が扉を開けてくれた。
獄寺は苛々しながら煙草を吸っていたのだろう。
部屋中にもくもくと紫煙が漂っていた。

ようやくはっきり見えた獄寺の表情は、俺を見た瞬間、歪んだ。
いつもなら、あんな時間に目が覚める事はない。
あんな嫌な夢を見たのも、獄寺からの淋しいってメッセージだったのかな?

ほら、いつでも飛んでって傍にいてやるから。

もっと俺だけを好きになってな!



Happy end




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -